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医療経営情報(2017年2月16日号)

2017/2/24

◆受動喫煙防止対策、「一部例外」の範囲拡大は認めない方針 世界基準のスモークフリー社会実現のための法案を提出したい意向

――厚生労働省
2月10日、塩崎恭久厚労相は定例大臣会見で受動喫煙防止対策について言及した。自由民主党の厚生労働部会で「一部例外」の範囲拡大を求める意見が上がったことに対し、否定的な意見を表明。世界基準のスモークフリー社会を実現できる法案を今通常国会に提出したいとした。

受動喫煙防止対策は、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを見据えて議論が進められてきた。国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が「たばこのないオリンピック」の開催を推し進めていることもあり、近年の開催国・開催都市ではすべて罰則付きの受動喫煙防止対策が講じられている。

昨年10月に厚生労働省が発表した受動喫煙防止対策案では、主な公共施設や医療機関、学校、飲食店などを対象に、施設の種類によって「敷地内禁煙」「建物内禁煙」「分煙」と義務付けのレベルを変える内容が盛り込まれ、医療機関は、この中でもっとも厳しい「敷地内禁煙」の対象となっている。建物内・外を問わず喫煙をすることができず、喫煙室の設置も認められない。

こうした方針に対し、飲食店を中心に反対意見が続出。延べ床面積が30平方メートル以下の小規模なバーを対象に一部例外を認める方針を固めたとの報道もあり、自由民主党の厚生労働部会では、さらに範囲拡大を求める声もあがっていた。

しかし、塩崎厚労相は「昨今の報道でいくつかありましたが、そのような案を固めた事実はございません」と明言。そのうえで、東京オリンピック・パラリンピックはもちろん、その前年にラグビーワールドカップを開催することや、インバウンドを2,000万人から4,000万人へと増やす倍増計画が進行していることを挙げ、「日本がどのように見えるかということもある」として世界基準の法案を提出したい意向を示した。今通常国会でどのような法案が提出され、可決に至るのか引き続き目が離せない状況だ。

◆がん免疫療法の新薬「キイトルーダ」、オプジーボと同額で発売
厚労省は「最適使用推進ガイドライン」の通知を実施

――MSD株式会社
2月15日、MSD株式会社は新薬「キイトルーダ」の発売を発表した。1日に薬価が半額に引き下げられた「オプジーボ」(小野薬品工業)の競合薬として薬価が注目されていたが、8日の中央社会保険医療協議会でオプジーボと同額となる1日3万9099円に決定。厚生労働省は、この2つの新薬に関して「最適使用推進ガイドライン」を策定し、14日に通知している。次世代のがん医療として注目されているがん免疫療法が、新たな局面を迎えたと言えそうだ。

「キイトルーダ」は、免疫チェックポイント阻害薬として、アメリカを含む50カ国以上で承認を取得。日本では、根治切除不能な悪性黒色腫(メラノーマ)および、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの効能・効果で承認を取得。2015年10月には切除不能な進行・再発の胃がんに対する効能・効果について、厚生労働省の「先駆け審査指定制度」が施行されてから初となる対象品目の一つに指定されている。

そのほかにも、膀胱がん、乳がん、胃がん、頭頸部がん、肝がん、多発性骨髄腫、食道がん、腎細胞がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がんなどを対象とした後期臨床試験も進行中。昨年12月には、再発もしくは難治性の古典的ホジキンリンパ腫に対する効能・効果について、製造販売承認事項一部変更承認申請も実施しており、今後はメラノーマや肺がん以外の難治性の症状に対して追加承認が行われる可能性も高い。

そうした状況を踏まえると、14日に厚労省が通知した「最適使用推進ガイドライン」が持つ意味は大きなものとなるだろう。このガイドラインは、メラノーマと非小細胞肺がんが対象だが、今後承認範囲が広がったときに策定されるガイドラインの基準となるからだ。

ちなみに、ガイドラインに明記されているのは、「キイトルーダ」および「オプジーボ」が使用できる医療機関や医師の要件など。がん診療連携拠点病院、特定機能病院、がん診療連携病院を中心に、外来化学療法室を設置している医療機関も該当するとしている。副作用に対応できるよう、24時間診療体制のもとで入院管理およびCTなどによる検査結果が当日得られることが要件となっており、充実した設備と体制が整っていることが条件となる。

また、医師の要件としては、メラノーマや非小細胞肺がんの薬物療法経験が2年以上あることが挙げられており、医薬品の情報管理体制が整備されていることも要件としている。今後、がんに限らず免疫療法は発展期を迎えることが予想されるため、医療機関としてはガイドラインをつぶさにチェックしておく必要があるのではないだろうか。

◆塩野義製薬、医療ビッグデータの分析・解析業務を行う新部署設立
今後の戦略立案につなげたい意向 市販後調査の精度アップも期待

――塩野義製薬株式会社
2月7日、塩野義製薬株式会社は4月1日付けで行う組織の改編・新設について発表。医療ビッグデータの分析・解析業務を担う専任組織として「デジタルインテリジェンス部」を新たに設置するとした。経営戦略本部の傘下とすることから、今後の同社の経営戦略に大きく関わってくる組織になることは明らかだ。

電子カルテやレセプト、特定健診、ゲノムなどあらゆる健康情報に関連するデータを集積した医療ビッグデータに関しては、政府が本腰を入れて利活用に取り組み始めている。厚生労働省は1月12日に「データ改革推進本部」を立ち上げた。塩崎恭久厚労相を本部長とし、健康・医療・介護分野を連結させたICTインフラの構築を目指しており、同省内では部局横断で取り組むとしている。

そうした政府の動きに対し、民間も敏感に反応。すでに、2014年11月には塩野義製薬を含む製薬大手など18社が参加する「医療ビッグデータ・コンソーシアム」を発足。6日には「政策提言2016」を発表し、地域レベルで医療ビッグデータを共有できる診療情報クラウドを立ち上げ、地域包括ケアや医薬品の市販後調査(PMS)などに活用するべきだと提言。今回、塩野義製薬が専任組織を立ち上げたことは、この提言に沿ったものであることは間違いない。

医療ビッグデータの民間活用は、画期的な新薬を開発したい製薬会社にとってだけでなく、医療機関にとっても大きなメリットがある。たとえば、今後ニーズの高まりが確実視される在宅医療がそうだ。介護施設やかかりつけ薬局などとの情報連携ができることで、効率的な医療が可能となるほか、患者の安定的な確保にもつながるだろう。また、PMSの精度を上げることにつながれば、より効果的な新薬の登場や製薬会社からの情報提供も期待できるため、患者に対してより有益で充実した情報提供ができるようになるのではないだろうか。そうした意味でも、塩野義製薬が新設する医療ビッグデータ専任組織の今後の取り組みには注目していきたい。

◆オンライン医療相談「first call」が「DEMECAL」と提携
自宅にいながら的確なアドバイスを医師から受けられる環境を整備

――株式会社Mediplat
2月6日、オンライン医療相談サービス「first call」を展開する株式会社Mediplatは、自宅でできる血液検査キット「DEMECAL」を販売する株式会社サンプリと業務提携したと発表。今春から、法人向けに連携サービスを展開するとした。特定健診に近い内容の検査やアドバイスが自宅で受けられる環境が整備されることになりそうだ。

「first call」は、自宅からテレビ電話やメッセージ機能を活用し、医師に直接相談ができるオンラインサービス。昨年2月から半年間の実証実験を行って9月より提供を開始し、昨年12月末時点でユーザー数は1万人を突破している。現在、登録医師は約60名で、内科や小児科、産婦人科、眼科など8つの診療科目に対応している。

その「first call」が連携する「DEMECAL」は、株式会社リージャーが開発した血液検査キット。指先からわずかな血液(0.05cc)を採取するだけで、体内状態がチェックできる。採取した血液を検査センターに送り、約1週間から10日前後で検査結果シートが郵送されてくる仕組みだ。希望者にはセンター到着後2~3日でメール通知も行っている。

注目したいのは、組合せ医療機器として日本で初めて厚生労働省管理医療機器の承認を取得している点。日本で特許を取得済みの「即時血漿分離デバイス」という世界初の技術により、わずかな採血量で一般の医療機関で行う血液検査と同精度のデータ提供を実現しているのが、その理由だ。すでに、約200の健康保険組合や約100の自治体のほか、健診機関、生命保険会社などにも導入されている。

健診の促進は、政府の成長戦略としても力を入れているポイントのひとつ。アベノミクス第三の矢として昨年6月に発表された「日本再興戦略2016」では、「国民の健康寿命の延伸」が重要な柱として掲げられている。2015年からは、すべての健康保険組合に対して、加入者の健康増進を目的としたデータヘルス計画の作成と実施が義務付けられ、加入者への適切な情報提供や専門家による個別指導の重要性が示されている。とりわけ、メタボリックシンドローム対策の柱として2008年に導入された特定健診は、政府も受診者の増加に取り組んでおり、時間も手間もかからない今回のMediplatのサービスはニーズを刺激することは間違いないと言えよう。

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