ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年2月24日号)
◆介護職員の平均月給は21万5200円、介護3職種とも20万円台
全産業の平均月給よりも5~8万円下回る結果
――厚生労働省
厚生労働省は2月22日、「平成28年賃金構造基本統計調査」を発表。介護職員(福祉施設介護員)の平均月給は21万5,200円であることがわかった。全産業の平均月給は30万4,400円で、8万8,800円も下回る結果となった。
この調査は、全国の主要産業で働く人たちの賃金の実態を明らかにするため、毎年7月に実施し、6月分として支払われた給与額の平均値を割り出している。10人以上を雇用する民間の65,881事業所のうち、49,783事業所から有効回答を得て集計した。それによると、平均月給は30万4,000円で前年比0.0%と変わらなかったものの、女性の賃金は過去最高となる244,600円。男女間の賃金格差も過去最小をマークした。また、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者の賃金平均は時給1,075円と、こちらも過去最高となっている。
一方、福祉施設介護員の平均月給は21万5,200円。ホームヘルパーは21万3,000円、介護支援専門員(ケアマネージャー)は25万5800円。ケアマネージャーと介護職員との差は約4万円しかなく、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)を取得後、5年以上の実務経験が必要なことを考えれば、技術力と知識量に見合った給与額とは言えない。
年間賞与などその他の特別給与額は、ケアマネージャーが56万7,600円、福祉施設介護員が48万5,300円と2カ月分の月給以上の額が支払われており、ベースとなる月給額を考慮すれば割合としては決して少なくはない。それだけに、ベースの低さが際立つ結果だと言えよう。
今年4月から、介護職員の賃金は約1万円切り上げられるが、それでも平均給与額と比べれば低額であることは言うまでもない。2025年には介護人材が約38万人不足すると言われている現在、待遇改善を図らなければ、成り手が減っていくのは間違いないだけに、抜本的な待遇改善策を講じる必要があり、政府がどのような策を打っていくか目が離せない状況が続く。
◆外国人介護福祉士、特例で今年4月から就労可能に
今年度の養成校卒業者も適用の対象
――法務省
法務省は、介護福祉士の養成校を卒業して介護福祉士の国家資格を得た外国人が、今年4月から現場で働けるように、特例措置を実施することを決めた。介護業界の人材不足が深刻化している現状を受け、一刻も早く外国人介護人材を定着させたいとの狙いが見える措置だ。
外国人の介護福祉士による日本の介護現場での就労は、昨年11月に成立した「出入国管理・難民認定法改正案」(いわゆる改正入管法)によって全面的に解禁された。この背景にあるのは、いわゆる「2025年問題」だ。団塊の世代が後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上となる超高齢化社会を迎えることになるため、現状でも不足している介護人材はさらに払底し、約38万人も不足すると見込まれている。
従来、介護分野での外国人労働者の受け入れは、経済連携協定(EPA)を締結しているベトナム、フィリピン、インドネシアの3カ国の出身者のみに限られていた。介護現場で働きながら学ぶ「技能実習制度」を利用したもので、受け入れ先は特別養護老人ホームなどの施設に限定されていた。しかも、受け入れ人数は受け入れ開始から8年間で累計約3800名にとどまっており、外国人に門戸を開いたとは呼べない状態だったと言える。
しかし、改正入管法の成立に伴って、EPA締結国以外の国から来日した外国人も、介護福祉士資格取得のために学べるようになり、資格取得後は長期間日本で働くことも可能となった。その施行がいつになるのか注目されてきたが、改正法案可決後から半年足らずの4月からの実施とすることで、今年度の養成学校卒業者もすぐに現場で働けるようになったのである。
ただし、急速に規制緩和が進んだため、今後は受け入れ施設側の環境整備が必要となってくるだろう。今までも、EPA介護福祉士の日本語能力が不足している点が指摘されており、介護サービスの品質低下を懸念する声も少なくない。介護施設側で受け入れ体制を整えようとするのはもちろん、国からのサポートがどの程度強化されるか、今後の対応を注視していく必要があると言えよう。
◆徘徊や転倒を予防する介護ベッド用見守りセンサーが登場
非接触で体動や心拍等のバイタルデータが感知できる技術を活用
――法務省
2月22日、株式会社構造計画研究所は、介護ベッド用の離床リスク検知センサー「EVER Relief」の販売を開始した。ベッドでの起き上がり動作から、就寝中の心拍や呼吸の異常まで感知。自動的にナースコールを鳴動させて介護者に知らせる仕組みだ。
「EVER Relief」のアイデアは、「バイタルセンサーを用いた施設型見守りシステム」として2014年に経済産業省の公募事業に採択された。その後実証実験を繰り返し、今回の製品化にこぎつけている。
現在、介護現場で多く使われているのは、スイッチタイプのセンサー。単なる寝返りでもナースコールが反応してしまうほか、必要なときに検知できないケースも多かった。そうした問題点を、「EVER Relief」は複数のセンサーを用いて動作を立体的に捉えることで解消。感知の精度を大幅にアップさせることに成功したため、転倒や徘徊を防止することに役立つという。
バイタルセンサーをつけているのも特徴。体調の変化を感知でき、そのデータをクラウド上に蓄積することで、傾向を可視化でき、介護方針にフィードバックさせることもできる。
センサーは厚さ18mm。マットレスの下に設置しても寝心地に影響しない設計となっている。要介護者に接触している必要はないため、余計な不快感を与える心配もない。狭小なスペースに設置できるのも特長で、要介護者と適度な距離を保ちながらリスク管理ができるのは大きなメリットだろう。
厚生労働省は、過度の監視や拘束の必要がなくなる見守り支援機器の利用を推奨しているが、この「EVER Relief」は夜間の介護業務をサポートする役割が期待できるため、人手不足解消につながるソリューションとなる可能性も十分にある。限られたリソースで要介護者の管理をしなければならない小規模事業所はもちろん、大規模事業所でも業務の効率化を実現するために、こうした見守り支援機器の導入は検討に値するのではないだろうか。
◆NTTドコモ、介護事業者向け支援サービスを提供開始
訪問先で入力した介護記録が、リアルタイムで他職員と共有可能
――株式会社NTTドコモ
2月13日、株式会社NTTドコモは、介護事業者向け支援サービス「HOPE LifeMark-WINCARE for docomo」の販売を開始した。携帯電話のサービスを取り扱うドコモショップの窓口でも取り扱う。介護職員間の情報共有が容易になるとともに、業務効率化が期待できるため、介護サービスの質向上や職員の残業時間削減などにつなげることができそうだ。
「HOPE LifeMark-WINCARE for docomo」は、NTTドコモが法人向けに提供しているクラウド型サービスパッケージ「ビジネスプラス」に拡充されたもの。「ビジネスプラス」は、ビジネスチャットや業務報告サービス、位置情報共有サービスなどを最大3つ選んで1アカウント月額500円から始められるビジネス支援パッケージ。必要な機能だけを絞ることで低価格化を実現している。「HOPE~」も同様の考え方で設計されており、介護報酬の請求業務から介護職員による介護記録業務まで、タブレットやスマートフォンで実施できる。クラウドサービスのため、法改正などに伴って発生するシステム更新時にも費用を必要としないのが大きなメリットと言える。
また、訪問介護の場合、従来は訪問先から事業所に戻って記録業務を行わなければならず、どうしても残業時間が嵩む傾向にあった。しかし「HOPE~」の場合、訪問先で介護記録を入力すれば事業所のパソコンや他職員のタブレットでその内容を共有でき、そのまま介護報酬の請求業務とも紐付けることができる。残業時間を圧縮してコストを下げることができ、介護職員にとっては望まない残業をしなくて済むというわけだ。
また、NTTドコモのタブレット端末「arrows Tab F-04H」の手書き入力機能に対応している点も見逃せない。紙に書く感覚で感覚的な操作ができるため、タブレットやスマートフォンの操作に不慣れな介護職員でもスムーズに対応することが可能。幅広い年齢の職員が活躍する現場では、特に重宝する機能。医療と介護の連携を図る医療ビッグデータの活用が始まれば、介護現場でのICT導入は必要不可欠。まだ導入を健闘していない事業所は、ひとまず概要をドコモショップで聞くだけでも、大きな意味があると言えよう。