ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年3月17日号)
◆「指定取消・効力の停止処分」を受けた介護事業所が過去最多
指定取消事由のトップは「不正請求」で全体の64%を占める
――厚生労働省
3月10日、厚生労働省で全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議が開催され、2015年度に「指定取消・効力の停止処分」を受けた介護事業所は計227件と過去最多だったことがわかった。指定取消および効力の停止の理由としては、いずれも「介護給付費の請求に関して不正があった」がもっとも多く、介護事業所のコンプライアンスに対する姿勢が問われる結果となった。
2000年度以降、指定取消・効力の停止処分を受けた介護事業所は合計で1,944件。2010年度以降は、2010年度118件、2011年度166件、2012年度120件、2013年度218件、2014年度215件となっており、2013年度以降急増しているのがわかる。
2015年度の処分の内訳を見ていくと、介護保険の請求ができなくなる「指定取消」が119件と半数以上にのぼる。一定期間保険の請求ができない「全ての効力停止」は42件、半年間新規利用者を受け入れられず、保険請求の上限が7割に減らされる「一部の効力停止」は66件となっている。なお、サービス種別で見ていくと訪問介護が83件ともっとも多く、次いで多いのが通所介護の52件、居宅介護支援の28件。
取消処分を受ける理由としてもっとも多いのが「不正請求」で、全体の64%を占める。また、「法令違反」は全体の29%だが、ここ数年右肩上がりに数字を伸ばしており、コンプライアンス意識の低い介護事業所が多いことがわかる。
「不正請求」の代表的な手口は、虚偽のサービス提供記録を作成するというもの。実際に職員が勤務していない時間帯に介護サービスを提供したかのように見せかけるほか、同一時間帯に複数利用者に対して1人の職員が介護サービスを提供したことにする手口もある。欠員状態であるのにもかかわらず、基準を満たした人員がいるかのように装うことや、有資格者のみができるサービスを無資格者が実施し、介護報酬を請求するパターンもある。
また、介護職員処遇改善加算を申請しているにもかかわらず、職員の賃金に反映されていないケースもあり、職員からの内部告発により発覚することも少なくない。目先の介護報酬を水増ししたとしても、結果として指定取消を受けてしまっては事業そのものが継続できなくなるため、本末転倒であることを介護事業所は改めて理解しておくべきだろう。
◆厚労省、「平成29年度介護報酬改定に関するQ&A」を公表
処遇改善加算を受けるための詳細なルールを解説
――厚生労働省
3月16日、厚生労働省は「平成29年度介護報酬改定に関するQ&A」を公表。「介護保険最新情報Vol.583」として、各都道府県および各市町村の介護保険担当課(室)あてに送付した。4月から拡充される介護職員の「処遇改善加算」について、詳細なルールが解説されているため、介護事業所は必ず確認しておきたい。
Q&Aは、全部で13項目掲載されている。最初の10項目は、今回新設される「キャリアパス要件III」についてのものだ。厚生労働省は、「キャリアパス要件III」について「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること」と示してきた。要するに、昇進や昇給に必要な勤続年数や保有資格を具体的に定めるよう求めたものであり、Q&Aの第1問目でも既存のキャリアパス要件Iとの違いについて記している。それによれば、キャリアパス要件Iは「職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること」が要件だが、昇給に関する内容を含めることまでは求めていないとしており、「キャリアパス要件III」を満たすには、昇給についての明確なルール設定が必要であることがわかる。
昇給の方式については、基本給による賃金改善が望ましいとしながらも、手当や賞与によるものでも良いとしているほか、非常勤職員を含めたすべての介護職員を対象にするべきだとしている。
また、注目したいのは昇給の基準となる資格についてである。介護福祉士や実務者研修の修了者を想定しているとしながらも、必ずしも公的な資格である必要はないとしている。つまり、各事業所で独自の資格を設けて、その取得に応じて昇給する仕組みを設ける場合も、その旨を明文化していれば「キャリアパス要件III」と認められるというわけだ。
介護福祉士を受験するには最大450時間の研修を受けることが必要であり、しかも年に1回しか受験機会がないため資格者を増やすのが難しい。しかし、独自資格であれば受験機会も増やすことが可能であるため、介護職員のキャリアアップを促すとともに、賃金アップも実現させることができる。もちろん、相応のキャリアアップを促す資格の設計が求められるが、公的資格だけに依存せず介護職員の待遇を改善させる可能性があるのは見逃せない。
そのほか、4月15にまでに就業規則の内容が確定できない場合は、その時点の暫定のものを添付すれば良いとしているほか、暫定の就業規則に変更が生じた場合は6月30日までに提出するなど、新たな加算を受けるための具体的な対処法も記されているので、念のために確認しておいたほうが良いだろう。
◆消防庁、ケアマネジャーの受験資格に「救急救命士」の追加を要望
介護の上位資格を目指すルートが広がる可能性も
――消防庁
総務庁消防庁は、3月10日に「平成28年度 救急業務のあり方に関する検討会 報告書」を公表。現役の救急救命士へのアンケート調査の結果などを踏まえたうえで、ケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格要件に救急救命士を加えることが「強く望まれる」とした。この要望が実現すれば、介護の上位資格であるケアマネジャーへのルートが広がるため、介護業界の人手不足解消につながる可能性が見込まれる。
消防庁の「救急業務のあり方に関する検討会」は、救急出動件数が年々増加している現状を踏まえ、救急業務を取り巻く諸課題に対応することを目的として設置された。同検討会では、全国の都道府県消防防災主管部局、都道府県衛生主管部局および消防本部に対してアンケートによる実態調査を実施。「消防機関以外の救急救命士は地域包括ケアシステムの中での活用が期待されている」との結果が出たことから、ケアプランの作成や他の介護サービス事業者との連絡・調整を行うなど、介護現場で主導的な役割を担うケアマネジャーに、救急救命処置のスキルを求めるに至ったと思われる。
現在、ケアマネジャー資格を受験するには、介護福祉士や社会福祉士など21の法定資格のいずれかを所持(※)しているか、介護職員初任者研修、ホームヘルパー2級課程修了、社会福祉主事任用資格のいずれかの資格を所持している必要がある(そのうえで、5年以上の実務経験が必要。それらの資格を1つも所持していない場合は、所定の福祉施設での相談援助・介護等に10年以上従事しなければならない)。
このように、さまざまな職種からケアマネジャー資格が取得できるよう間口を広げているものの、合格者の半数近くが介護福祉士というのが現状だ。ケアマネジャーには、今後地域包括ケアシステムの中で中心的な役割が求められるだけに、より広い職種から目指す人材を増やすべきなのは明らかであり、今回の消防庁の提言を厚生労働省がどのように受け止めるか注目される。
※ケアマネジャー受験資格として定められている法定資格は、以下のとおり。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士
◆離床センサーの入れ忘れを防止するスマートスイッチが登場
ベッドから離れると自動的に離床センサーがオンになる仕組み
――株式会社ジェイエスピー
3月15日、ソフトウェアの開発・販売を行っている株式会社ジェイエスピーは、離床センサーの入れ忘れを防止するスマートスイッチ「moniswitch」を開発したと発表。4月3日より販売を開始する。
「moniswitch」は、介護ベッドに備え付けられた離床センサーとナースコール装置の間に取り付けて使用する。「moniコン」という500円玉サイズの通信端末を携帯した介護スタッフがベッドから離れると、自動的に離床センサーがオンになる仕組み。
ベッドでの介助作業時は「moniswitch」のボタンを押して離床センサーをオフにするが、「moniコン」を持っていなければオフにできない設計となっているため、要介護者などが誤操作をしてしまうこともない。また、タイマー式ではないため、「moniコン」を携帯したスタッフが近くにいる間は離床センサーがオフになったため、誤報も時間も気にしなくて済む。
ジェイエスピー社は、2013年から離床センサーを活用した見守りシステムの開発に取り組んできた。その過程で、離床センサーの入れ忘れによるベッドからの転倒・転落事故や徘徊などの発見遅れなどの事例が多いことを知り、「moniswitch」の開発に踏み切ったという。
実際、徘徊を防止できずに利用者が死亡してしまった事例では、施設側に賠償命令が下される例が少なくない。2014年1月に徘徊癖があった認知症の76歳女性が通所先のデイサービスセンターから抜け出し、そのまま死亡してしまった事件では、昨年9月に施設側の過失との判決が下り、約2870万円の支払いを命じられた。そうしたリスクを防ぐためにも離床センサーを有効に活用できる「moniswitch」は注目したいICTツールだと言えよう。
なお、「moniswitch」は従来の離床センサーをそのまま使用できるため、初期投資が抑えることが可能。1台9,800円で、「moniコン」は1個3,000円、10個28,000円だが、レンタルでの対応も実施している。