医療・歯科・介護福祉業界の経営支援に強い大阪の公認会計士・税理士事務所

こんにちは。

大阪市中央区の上田公認会計士事務所の上田です。
コートを着て外を歩くとじんわり汗をかく日も増えてきました。梅の花も咲き、春が近付いてきたことを感じる今日この頃、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

今回は、「まいど! ～宇宙を呼びよせた町工場のおっちゃんの物語」という本をご紹介させていただきます。
先日、私は著者の講演会に参加し深く感銘を受けました。著者はモノづくりで東大阪を元気にしたい、その想いを胸に全国で講演されている東大阪の町工場の社長、青木　豊彦さんです。青木さんは、「まいど１号」という小型人工衛星の打ち上げに成功した東大阪宇宙開発協同組合の初代理事長です。同組合が人工衛星を打ち上げることとなったきっかけは、若者をモノづくりの現場に戻したいという青木さんの想いからでした。

2000年6月、青木さんは、地元商工会議所の方から東大阪を明るくするために力を貸して欲しいと依頼されます。それがきっかけで見学した他の町工場で驚きを覚えます。平均年齢は57歳、町工場には若い職人がいないのです。現実を知った青木さんは、東大阪のモノづくりに若者を呼び戻し、元気にするため立ち上がります。

まずは、モノづくりから離れた若者にどのようにアピールすれば来て貰えるか、それを知るために若者を理解するところから始めます。そして、若者を引き付けるもの、それは、ファッションだと閃きました。モノづくりにもファッションを持ち込んだらいいのではないか、と。だが、これはすぐに諦めました。中国製のアクセサリーがとても安価で売られていることを知ったからです。

何かするのであれば、東大阪の技術が生かせる、精度が求められるものにしよう。次に考えられたのは、飛行機です。部品ではなく飛行機そのものを東大阪で作ろうという話があがりました。早速、取引先の航空機メーカーに相談しましたが、誰も相手にしてくれません。飛行機の製造には高度な技術が求められるのはもちろんですが、たくさんの規制や許認可事項があり簡単に参入できる世界ではなかったのです。

東大阪には、町工場の守備範囲の広さを示す「歯ブラシからロケットまで」という表現があります。ファッションもダメ、飛行機もダメ、と少々トーンダウンした青木さんたちでしたが、そのロケットはどうかと持ち上がりました。若者に夢を与えるという意味でも、ロケットなら言うことありません。ただ、ロケットは開発費が莫大になり過ぎ、中小企業は下請けにならざるを得ない。そこで、人工衛星という対案が出てきたのです。人工衛星なら開発費もロケットに比べればグッと下がり、中小企業でも下請けにならずできるのではないか。そして、2002年7月、東大阪宇宙関連開発研究会が発足、同年12月に東大阪宇宙開発協同組合を設立、一連の中心にいた青木さんが理事長に就任しました。

ロケットより低コストとはいえ、人工衛星の開発にはそれなりのまとまったお金が必要となります。プロジェクトが動き出してから青木さんは全国に足を運び、自分たちがやりたいことを説明して回りました。その過程で、資金援助を受けるために、ある独立行政法人の助成事業を知り、早速応募しました。目的がはっきりしていなかった一度目は落選したものの、「宇宙からの雷放電観測」と目的もはっきりした二度目に見事審査を突破、５年間で７億円の助成が受けられることとになりました。青木さんは人工衛星を打ち上げると目標を掲げ、行動することで、助成事業を教えてくれる人や、人工衛星の目的となる研究を行っている川﨑先生と出会うこととなったのです。

ただし、人工衛星を打ち上げるまで、順風満帆というわけではありません。人工衛星を打ち上げた時、青木さんは理事長ではありませんでした。2005年2月、組合の総会で理事長を解任されたのです。熱意が先走りすぎ、他の理事や組合員の気持ちをおもんばかる姿勢を欠いたことが問題の根源だったのではないかと青木さんは当時を振り返ります。青木さんは、他の理事や組合員の信用を失い、理事長はおろか理事としての地位も失いました。それでも、人工衛生を打ち上げるまでは、一組合員として製作に関わり続けるべきだという尊敬する方からのアドバイスを受け、組合には残りました。信用を失い、地位を追われた組合に残るというのはさぞかしつらいことだったでしょう。

講演会で、青木さんは、このようにおっしゃっていました。
人工衛星を打ち上げることは叶わない夢とは思いませんでした。志を持ちそれに向かってまい進する、そうすることによりいずれその夢は叶うのです。試合でもなんでも自分が負けと言った時点が負けなのです。負けと言わない限り、負けることはない。それが勝利に繋がる一番の秘訣です、と。
青木さんのことばにとても胸が熱くなりました。