ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年4月7日号)
◆外国人技能実習適正化法の施行日、11月1日に決定
受験者のレベルがアップし、介護人材の資質底上げに貢献か
4月4日、政府は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の施行期日を定める政令」を閣議決定。いわゆる「外国人技能実習適正化法」の施行日が11月1日に決まった。新たに介護職種を追加するとともに、外国人実習生が通報・申告できる窓口も整備。人権侵害行為に罰則も設ける。
外国人が自国の経済発展に生かすため日本で知識や技術を学ぶ「外国人技能実習制度」は、1993年に導入された。しかし、海外から労働力を確保するための制度として利用されてきた側面もあり、実習生を保護するために法整備が行われた格好だ。
具体的には、監理団体を許可制にし、実習実施者は届出制として、技能実習計画は都度認定性となった。そのマネジメントは、今年1月に創設された認可法人外国人技能実習機構(http://www.otit.go.jp)が担当する。同機構によれば、監理団体の許可申請は6月1日、技能実習計画認定申請は7月3日より開始される予定となっている。
なお、監理団体の主な認可基準としては、「営利を目的としない法人」であり、実習を実施する事業者に対して3カ月に1回以上の定期監査を行えなければならない。定期監査は、4分の1以上の実習生と面談を行うほか、実施状況の実地確認、実習生の宿泊施設など正確環境の確認も行う必要がある。
また、優良な実習実施者の要件も定められている。実績や体制、実習生の待遇や相談・支援体制、地域社会との共生など6項目で120点満点となっており、6割以上であれば優良と認定される。法令違反や実習生の失踪などは大幅な減点となる。
技能実習計画の認定関連の手続きに必要な書類などの情報や手数料については、4月末までに外国人技能実習機構のホームページで掲載予定。今後、「日本型介護」の輸出が活発化していくことも考慮すると、外国人技能実習生を受け入れ、実習のノウハウを磨いていくことが新たなビジネスチャンスを広げるきっかけとなることは明らか。海外進出を視野に入れている事業者は、少なくとも同機構のホームページなどで情報を逐次チェックしていくべきだろう。
◆介護職員の平均月給額、9,530円増 2016年度調査
定期昇給による引き上げが約7割、賃金水準引き上げは少数派
――厚生労働省
3月30日、厚生労働省は「平成28年度介護従事者処遇状況等調査結果」を発表。介護職員の平均月給額が1年間で9,530円増え、28万9,780円となったことが明らかとなった。基本給は2,790円増の17万9,680円。給与引き上げの方法としては、定期昇給が69.7%と7割近くで、手当の引き上げ・新設は29.9%、賞与等の引き上げ・新設は14.8%。給与表を改定して賃金水準を引き上げようとしている事業者は16.4%にとどまっている。
調査は昨年10月に実施。直近の9月の実績を反映したものだ。調査の対象は、介護職員処遇改善加算(I~IV)を取得している施設・事業所。無作為に抽出した1万577の施設・事業所を対象に行い、有効回答が得られたのは8,055の施設・事業所だった。有効回答率は76.2%。
前回の2015年度調査では、平均月給額が1年間で7,180円増えていたため、2年間で1万6,710円増えたことになる。しかし、平均月給額は賞与や手当なども含んだ数字であるため、介護職員の平均年収は347万7,360円となる。
2015年度のデータのため単純な比較はできないが、国税庁が発表している「平成27年分民間給与実態統計調査」によれば、平均年収は420万4,000円(男性520万5,000円、女性276万円)。つまり、介護職員の年収は平均より72万円以上も下回っている結果になるのである。
介護職員の処遇改善は政府も重要課題として取り組んでおり、今年4月からは平均月額1万円引き上げることが決まっている。しかし、それでも月額約30万円、年収にすると360万円であり、平均年収にはまだ追いつかないのが実情。ベースアップにあたる賃金水準引き上げに取り組むことができない事業者が多いのも仕方がないと言えよう。しかも、社会保障費がますます抑制されることは間違いない情勢のため、介護報酬改定による待遇改善は期待しにくい。そうした意味では、混合介護の解禁などのドラスティックなてこ入れが、持続的な介護体制を保つために求められるのではないだろうか。
◆特養の経営状況、さらに悪化
赤字割合が上昇し、人件費も増加
――独立行政法人福祉医療機構
4月4日、独立行政法人福祉医療機構は「社会福祉法人経営動向調査」の結果を発表。特別養護老人ホームの赤字割合が上昇するとともに、人件費が増加していることがわかった。経営している社会福祉法人の資金繰りは悪化しており、今後の見通しも明るくない状況で、より厳しさを増していることが浮き彫りとなった。
この調査は、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人を対象に、四半期に一度実施している。今回は今年3月1日から3月24日の間に398法人を対象として調査を行い、385の有効回答を得た(有効回答数は96.7%)。
規模別に見ていくと、前回の昨年11月調査では、大規模法人が比較的業況が安定していると判断していたが、今回の調査では大幅に低下。先行きに対しては、規模を問わずマイナスの見通しを持っていることが明らかとなっている。
経営上の課題としては、前回以上に「収益の低下」を挙げる法人が増加し、昨年11月調査では48.5%だったのが52.6%に増えている。また、「人件費の増加」を挙げている法人が前回の57.9%から63.9%に増えているのも大きな特徴。「人件費以外の経費の増加」は逆に21.7%から20.3%に減っているのも、人件費割合が高まっていることを示唆している。
特別養護老人ホームは、そもそも入所者に対して職員数が多い構造のため、人件費率が高くなりがち。社会保障費は今後も抑制の対象となることが確実であることから、介護報酬は次期改定でも引き下げられるのは確定的だ。では、どのように人件費を確保するかといえば、処遇改善加算をしっかりと取得することがカギとなってくるだろう。今年4月からはさらに新たな加算区分が拡充されるため、増加する人件費をカバーするためにも、定期昇給や職員のキャリアパスの仕組みを整備していくことが不可欠だと言えよう。
◆特養の新規入所、要介護1・2からの申込時への対応を通知
特例入所の要件を記載した書類を用意することが必要に
――厚生労働省
3月29日、厚生労働省は「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針」を一部改正したと発表。「介護保険最新情報Vol.587」として、各都道府県および各市町村の介護保険担当課(室)あてに送付した。要介護1・2の入所希望者への対応方法について、特例入所の要件を記した用紙を提示して該当するか否かを記載してもらうようにするなど、具体的に通知している。
「指定介護老人福祉施設等」とは、指定介護老人福祉施設(定員30人以上の特別養護老人ホーム)と指定地域密着型介護老人福祉施設(定員30人未満の特別養護老人ホーム)を指す。2015年4月から、特別養護老人ホームへの入所は原則として要介護3以上に限定されているが、「やむをえない事由」がある要介護1・2の人は、特例での入所が認められている。
特例が適用されるのは、認知症や知的障害・精神障害を患っている場合や、家族などによる深刻な虐待が疑われる場合、そして単身世帯だったり同居家族が高齢または病弱だったりして支援が期待できず、地域の介護サービスや生活支援の供給が不十分である場合。しかし、その判断は施設側に委ねられていたため、施設の独断で拒否する可能性もあった。
そこで、入所希望者がより状況を伝えやすいように配慮。具体的には、入所申し込みの手続き書類に、前述の特例入所要件をすべて記載し、説明したうえで該当するか否かを記入してもらうように通達している。厚労省が「記載例」として挙げているのは以下のとおり。該当する項目にチェックボックスを設けて申込者が記入しやすいよう配慮しているのが特徴だ。
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(記載例)
要介護1又は2の方が入所するためには、下記のいずれかに該当することが必要です。ご自身の判断で該当すると思われる項目に印を付けてください。
□認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる
□知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られる
□家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難である
□単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である
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そのうえで厚労省は、特例入所の要件に該当している場合、「入所申し込みを受け付けない取扱いは認めない」としている。そして、特例での入所申込みを受けた場合は、保険者市町村に対して報告し、特例に該当しているか否かの判断も適宜意見を求める必要まで明記。さらに、「入所に関する検討のための委員会」を設置して決定は合議のうえ決めなければならず、委員会での協議内容は保険者市町村の意見を含めて記録し、2年間保存する必要がある。もちろん、市町村や都道府県から依頼があった際は、その記録を提出しなければならない。要介護の度合いにかかわらず、特別養護老人ホームでの介護が必要な人に対するセーフティネットを設けた格好であり、入所申込者への対応や入所の決定にはこれまで以上に注意を払う必要があると言えそうだ。