ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年5月5日号)
◆規制改革推進会議、年内に「混合介護」のガイドライン策定を要望
介護職員の指名料や繁忙期・時間帯の時間指定料の設定も提案
――規制改革推進会議
4月25日、規制改革推進会議が開かれ、介護保険対象のサービスと対象外のサービスを柔軟に組み合わせる「混合介護」の解禁を早急に行うべきだと提言。介護事業者や地方公共団体が遵守するべきガイドラインを今年中に策定・発出すべきだとした。
ガイドラインには、訪問介護や通所介護における組み合わせ方や、介護サービス価格の柔軟化、そしてサービス提供体制の整備の観点を盛り込むべきだとしている。
まず、訪問介護との組み合わせについては、介護事業者と保険者である地方自治体の双方に事務的な負担をかけないような保険請求のルール導入を提案。具体的には「人数割り制度」や「サービス提供時間の一定割合について保険請求を認める制度」といったみなし請求制度が考えられるとした。
通所介護では、保険サービスを提供していない日・時間帯を活用し、たとえば「認知症カフェ」といった形態の店舗を営業するなど、保険外サービスの提供を行えるようにするべきだとした。また、現状では要介護認定から外れると同じ施設で機能訓練を受けることはできないが、そうした状況を解消することも必要だとしている。
介護サービス価格については、介護職員の指名料や、繁忙期・時間帯にサービスを受けるための時間指定料を設定するべきだとした。指名料については、価格を職員の能力に応じて設定することで、介護職員の処遇改善やモチベーション向上につながることが期待できる。そうなれば利用者の満足度がアップすることも期待できるというわけだ。また、時間指定料については、逆に閑散期・時間帯の割引も提案。そうすることでサービスの平準化や効率化も期待できるため、人手不足解消にもつながるとしている。
もちろん、これらの取り組みは利用者に金銭的な負担をかけたり、自立支援や重度化防止を妨げたりする可能性もある。そのため、ケアマネジャーが保険外サービスを含めたケアプランを作成する必要性や、重要事項説明に該当するようなルールの策定についても言及。リスクを最小限に抑えるよう工夫された制度の制定を求めている。
いずれも現実的な提案であり、厚生労働省も4月6日に発表した「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」で混合介護を推進するべきだと表明しているだけに、解禁に向けた動きが一気に加速していく可能性は高い。しかし、保険者である自治体側を始めとして、行政コストの増加などを懸念する向きが多いほか、従来の介護保険サービスが軽視されることを警戒する声も少なくない。そうした意味では、どこまで充実した内容にでき、介護現場のモチベーションも高められるかは、いかに綿密なガイドラインが策定できるかにかかっていると言えよう。
◆多職種の連携・調整にビデオ通話などのICT活用を
厚労省は介護報酬引き上げでの後押しを示唆
――厚生労働省
4月19日、厚生労働省は「医療と介護の連携に関する意見交換会」を開催。介護だけでなく医療など多職種の関係者の円滑な情報共有・相互理解を実現するために、カンファレンスをビデオ通話で行うなどICT化の促進を行うべきだとの意見が相次いだ。厚労省の担当者はそうした意見を受け、円滑な連携に役立つならばICT化を後押ししたいと明言。2018年度の次期介護報酬改定の審議の場でも検討を進めていきたいとした。
超高齢化社会を迎え、在宅医療や自宅での看取りも増えている現在、医療を受けながら介護保険サービスを利用するのがスタンダードになりつつある。必然的に、介護施設内だけでなく医療など複数の関係機関の密接な連携が求められており、関係者間の迅速な情報共有や相互理解が必須となってきている。
しかし、多職種の関係者が一堂に会する機会を設定するのは簡単ではない。服薬状況も含めて情報共有ができていなかったり、患者が真に必要とするサービスが迅速に提供できていなかったりするケースがあるほか、医療職とケアマネジャーとの連携が不足しているため適切なケアプランの作成・変更ができないとの指摘もある。
そうした現状を受け、意見交換会ではICTを取り入れる必要性を訴える意見が続出。一堂に会することは難しくても、ビデオ通話を活用すれば頻繁にカンファレンスの場を設けることができるというわけだ。多職種間の連携が深まれば患者の利益につながるとの意見もあり、厚労省側も具体的な検討を進めたいとしている。
現在、多職種間の情報共有を円滑化するシステムやツールは多数開発・提供されている。自治体向けに無料提供しているものもあり、開発・提供を担うIT企業側も大きなビジネスチャンスと捉えているようだ。今後、地域包括ケアシステムの構築が進められれば、よりICT化の必然性が高まることは確実なだけに、介護事業者としてはいち早く導入を検討し、介護職員がしっかり対応できるようトレーニングを積んでいく必要があるのではないだろうか。
◆名鉄、インターネットインフィニティーと合弁会社設立
東海地方にリハビリ型のデイサービス施設を展開予定
――名古屋鉄道株式会社
4月24日、名古屋鉄道株式会社(名鉄)は株式会社インターネットインフィニティーと業務提携契約を締結したと発表。合弁会社を設立し、愛知・岐阜・三重の3県において短時間のリハビリ型デイサービス施設を展開するとした。東海地方の介護ビジネスに大きな影響を与えそうだ。
両社が設立する合弁会社は「株式会社名鉄ライフサポート」。出資比率は名鉄が90%、インターネットインフィニティー社が10%。今年6月1日付けで設立する予定となっている。
名鉄は、2007年にも介護業界に参入。介護付有料老人ホームの経営に携わったものの不振に終わり、2011年に撤退している。しかし、今回業務提携を結んだインターネットインフィニティー社は、ケアマネジャーを対象とするサイト「ケアマネジメント・オンライン」を運営するほか、短時間のリハビリ型デイサービス「レコードブック」を展開してきた。それらで培ってきた介護の経営ノウハウを生かし、シニア向けビジネスの創出・拡大を目指す意向だ。
東海地方の3県で介護ビジネスを展開する事業者にとって、今回の名鉄の動きは脅威だろう。なぜならば、鉄道業者としての名鉄は、私鉄として日本で第3位の総営業距離を誇り、駅数は275駅にものぼるからだ。豊富な拠点と抜群のネームバリューを生かすことで、スピード感あふれる事業展開を目指すことが容易に想像されよう。