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医療経営情報(2017年5月18日号)

2017/5/24

◆日慢協、専門医の50%以上が「総合診療専門医」であるべきと提言 後期高齢者医療を視野に 高度慢性期病院での研修の必要性に言及

――一般社団法人 日本慢性期医療協会
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、5月11日の記者会見で専門医の50%以上は「総合診療専門医」であるべきと提言。その研修は、一定レベル以上の高度慢性期病院にも認め、臓器別の専門医も約1年間の総合診療医研修を義務付けるべきだとした。

総合診療専門医が必要な理由として、武久会長は後期高齢者人口の増加を挙げている。「人口推計」(総務省、2015年10月)によれば、後期高齢者人口は1641万人。2014年の「患者調査」によれば、約90数万人いる入院患者の8割に相当する約70万人が後期高齢者であり、2055年には100万人以上に到達することが見込まれる。

そもそも後期高齢者は、1つの臓器だけでなく複数の臓器が機能障害を起こしているケースが多いため、総合的に診療する必要があるというわけだ。武久会長は、諸外国の総医師数の20~50%がGP(General Practitioner,General practice)と称される総合診療医であることを挙げつつ、インターン制度が廃止された1968年から新しい医師臨床研修制度がスタートした2004年までに医学部を卒業した医師が卒後研修を受けていないことにも言及。「1つの医局の中の狭い領域の専門医」として生きてきたため、「縫合もできない医師もいる」と警鐘を鳴らし、臓器別専門医のほうが、全身の臓器病変を総合的に治療できる能力を持つ総合診療専門医よりも評価されている現状にも危機感を示した。

この武久会長の提言は、来年4月の制度開始を目指して整備指針の作成が進められている新専門医制度を念頭に置いたものであることは明らか。新専門医制度では、プライマリ・ケアの充実を目指して「総合診療専門医」の設置が予定されているが、地域医療を崩壊させる恐れがあるとして、制度設計の見直しが必要な状況となっており、来年4月の制度開始に間に合うか微妙な情勢となっている。

新専門医制度を取り巻く問題の焦点となっているのは、研修の実施機関をどこにするかだ。現在、「大学病院などの基幹病院が中心」となっているが、都市部に研修生が集まる可能性が高いため、地方の医師不足を助長させるとの批判が相次いでいる。

厚生労働省と、新専門医制度の制度設計を行っている一般社団法人日本専門医機構は3月15日に開催された「新たな専門医の仕組みに関する説明会」で、大学以外の施設でも研修が実施できるよう基準設定する方針を明らかにしている。しかし、武久会長は、武久会長は一定以上のレベルにある高度慢性期病院での研修義務付けを盛り込むことで、後期高齢者医療に携わる総合診療医を育成したい意向を示したと言えよう。この提言が、新専門医制度の制度設計にどのような影響を与えるか、ぜひ注目していきたい。

◆災害時の中山間地域への医薬品搬送にドローンとAIを活用
浜松市と浜松医科大学、開発会社が協定 今年度中の実用化目指す

――静岡県浜松市
5月16日、浜松市と国立大学法人浜松医科大学、そして小型無人航空機(ドローン)の研究開発企業である株式会社エンルートラボの三者が「浜松ドローン・AI利活用協定」を締結。ドローンと人工知能(AI)を活用し、災害時の中山間地域への医薬品搬送などに役立てるのが目的だ。5月中に実証実験を開始し、今年度中の実用化を目指す。日本は中山間地域が国土面積の約7割を占めているため、同協定の成果は全国で共有できる可能性が極めて高く、その動向が注目される。

浜松市が同協定を結んだのは、同市の地理的な状況が大きく影響している。同市に流れる天竜川は古くから「暴れ天竜」と呼ばれるほど水害が頻繁に起こっており、多数のダムを建設するなどして治水を行ってきたが、現在も増水による被害はなくなっていない。とりわけ、観光名所としても知られる佐久間ダム近くにある原田橋は2015年に崩落。現在は仮設橋がかかっているが、増水時は不通になるため、その近隣エリアにある診療所への医薬品搬送ができなかった。

現場は急峻な地形のため、ヘリコプターが着陸することも不可能。そこで、ドローンを活用することが検討されたというわけだ。まずは実証実験で橋の下の飛行や、運搬する医薬品の状態などを確認し、課題を抽出。解決策を出してできるだけ早く実用化させる。

また、この計画で注目したいのは、ドローンを単なる輸送だけでなく、診療にも活用できる可能性があるところだ。各種カメラやセンサーを搭載することで、患者の容態を確認したり医師が指示を出したりすることもできる。つまり、災害などの影響で通信インフラがダメージを受けた場合でも、遠隔診療ができるわけで、今回の浜松市の取り組みが、救急を含めた医療のあり方を大きく変える可能性がある。特に、へき地での診療所経営には良い意味での影響を与えることが予測されるため、同協定がどのような成果を挙げていくのか、今後も目が離せない。

◆IT導入補助金の活用可能!クラウド型医事業務支援サービスがスタート
煩雑なレセプト入力も代行 導入すれば紙カルテ電子化サービスも無料に

――株式会社HealtheeOne
5月15日、医療ICTサービスの開発・販売を手がける株式会社HealtheeOneは、一般診療所向けの付帯業務アウトソーシングサービス「HealtheeOneクラウド」の利用申込受付を開始したと発表。同時に、紙カルテの電子化サービス「HealtheeOneスキャン」の申込受付も開始したが、こちらは「HealtheeOneクラウド」を導入すれば無料で利用することが可能だという。

「HealtheeOneクラウド」は、HealtheeOne社が独自に開発したタブレット端末用診察記録アプリと、同社のオペレーションセンター、そして日医標準レセプトソフト「ORCA」などを複合的に活用することで診療所の業務および経営の効率化を支援する仕組み。操作はタッチパネルで直感的に行うことができるため、診察の妨げにもならない。そして、レセプト入力などの煩雑な業務をアウトソーシングできるため、診察・治療に集中して取り組むことができるというわけだ。

 まだ電子カルテを導入していない診療所にとっては、紙カルテの電子化サービスを行っているのも注目したい。原則として、HealtheeOne社のオペレーションセンターにおいて手作業で電子化するため、品質保持も期待できる。「HealtheeOneクラウド」と連携することで、通常は1ページ100~250円のところ、無料で利用できるのはコスト的なメリットがもちろん大きいが、それ以上に電子カルテへの移行がスムーズにできるのが魅力だと言えよう。

IT導入補助金が活用できるのも見逃せない。IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等がソフトウェアなどのITツールを導入する経費の一部を補助するもの。「HealtheeOneクラウド」は補助対象サービスとして採択されており、6月30日までに交付申請を行えば補助金を受けることが可能だ。なお、「HealtheeOneクラウド」は月額制で、月98,000円のエッセンシャルコース、月149,800円のスタンダードコース、月248,000円のプレミアムコースの3種類。レセプト処理代行に対応しているのはスタンダードコースとプレミアムコースで、スタンダードコースは月間500件まで、プレミアムコースは無制限で対応している。

この料金を高いと見るか安いと見るかは診療所によって異なるだろうが、レセプト業務を担当するスタッフの人件費をそのまま充当できるわけで、長期的な人材確保やスタッフマネジメントの必要性を考慮した場合、格安であることは間違いない。まだ電子カルテに移行しておらず、経営のスリム化を考えているのであれば、検討する価値が十分にあるのではないだろうか。

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