新着情報

ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年6月9日号)

介護経営情報(2017年6月9日号)

2017/6/16

◆訪問介護の人員基準緩和やデイサービスの給付適正化を検討
来年度の介護報酬改定で 「骨太の方針」素案

――経済財政諮問会議
 6月2日、首相官邸で経済財政諮問会議が開かれ、「骨太の方針2017」(経済財政運営と改革の基本方針2017)の素案が発表された。介護関連では、生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準を緩和することや、通所介護(デイサービス)などの給付適正化が明記。来年度の介護報酬改定で対応する方針が示された。

 訪問介護での生活援助については、要介護度が低い利用者が多いことから「ヘルパーを家政婦代わりにしている」との指摘もあり、財務省などから給付額を大幅に減らすよう財務省などから繰り返し求められてきた。しかし、給付額を減らせば事業者にとって大きな痛手となるため、人員基準を緩和することで介護報酬を下げる方針へと切り替えた格好だ。限られたマンパワーを有効に活用しようという意図も見える。

 通所介護に関しては、前回の2015年改定で機能分化が示され、予防通所介護は報酬ダウンとなり、逆に中重度者や認知症高齢者の積極的な受け入れは新加算で評価されるようになった。一方、定員18人以下の小規模型通所介護は昨年4月から地域密着型サービスへ移行するなど再編を急いでおり、地域包括ケアシステム導入へ向け、さらに地域に密着した形に変わっていくことが予想される。

 そのほか、今回発表された素案では、自立支援に積極的に取り組む介護サービス事業者に対し、インセンティブを付与するため介護報酬のメリハリを付けることも明記。今年の介護保険法改正で創設が決まった「介護医療院」についても、介護報酬や施設基準のあり方を検討していくとしている。「介護医療院」は日常的な医療ケアや看取り・ターミナルケアを含めた医療機能と、生活施設としての機能を兼ね備えた施設であり、医療法上は医療提供施設として位置づけられる。現行の介護療養病床の経過措置期間は6年間となることが決まっているものの、今後は医療と介護の双方の要素を兼ね備えたハイブリッド型施設が増えていくことは間違いない。訪問介護や通所介護のあり方が厳しくなっていくことも踏まえると、介護施設のあり方そのものが変わっていく可能性もあり、事業者にとっては従来の運営方法で立ち行かなくなっていくことも視野に入れ、今後の戦略を検討していく必要があるだろう。

◆前回改定で新設された「社会参加支援加算」、算定は19.2%
訪問リハビリテーションの効率的な運営が必要

――厚生労働省
6月7日、社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、前回の介護報酬改定で新設された「社会参加支援加算」を届け出た事業所は、昨年10月時点でたった19.2%だったことがわかった。事業所が「社会参加支援加算」を届け出ない理由としてもっとも多かったのは、「利用者のリハビリテーションのゴールが社会参加となっていない」で40.1%、「利用者のADL、IADLの向上が進まず通所介護等に移行できない」が28.9%だった。

「社会参加支援加算」は、通所・訪問リハビリテーションの利用によってADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)が向上し、社会参加に資する取り組みに移行するなど、質の高いリハビリテーションを提供していると評価するもの。点数は1日あたり17単位となっている。なお、ADLは食事や排泄、入浴、衣服の着脱など、IADLは買い物や洗濯、掃除などの家事全般、電話応対などができることを指す。

現在の介護政策が自立支援の促進に軸足を置いていることを踏まえると、この結果は政府・厚生労働省にとって到底甘受できないと言える。そこで、同日の分科会では訪問リハビリテーションをいかに効率的に運営するかが議論された。

大きな課題となっているのは、訪問リハビリテーションの開始時期だ。同時の分科会で提示された資料によれば、病院から退院後、訪問リハビリテーションを開始するまでに2週間以上の間が空いた利用者は32.0%にのぼり、4週間以上要した利用者も23.5%いる。

退院後の機能低下を防止するためには、できるだけ早期に通所・訪問リハビリテーションを開始させることが有効。2週間以内にリハビリテーションを開始した場合、機能回復の成果がより大きくなるという説もあり、できるだけ早く開始するべきとの意見が相次いだ。

早期の取り組みを妨げている要因のひとつが、リハビリテーション実施に必要なケアプランの立案。そのための手続きに時間を要してタイムラグが生じてしまうのが実情だ。そこで、厚生労働省は入院中に訪問・通所リハビリテーション職員が病院に出向いて直接情報交換を行うことを提言。「早期にリハビリテーションを導入するためには効果的な取組であると考えられる」としている。

こうした取り組みには、ケアマネジャーの適切かつ迅速な行動が必要なのは言うまでもない。裏返せば、ケアマネジャーに大きな負担をかけることにもつながりかねない。負担をかけず、円滑な取り組みを促すには介護施設と病院が密接に連携し、ケアマネジャーが動きやすい環境を整えることが肝要になってくる。そのためには、迅速な情報共有を可能にするIT環境を用意するなどの措置も欠かせないのではないだろうか。

◆「口腔衛生管理加算」を算定した施設はわずか6.5%
歯科衛生士を雇用する施設は1割程度にとどまる

――厚生労働省
6月7日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会では、介護施設の「口腔衛生管理」に対する取り組みが全体的に低調であることも明らかとなった。昨年4月の審査分で、月110単位で加算される「口腔衛生管理加算」を算定している施設はわずか6.5%であり、比較的取り組みやすい「口腔衛生管理体制加算」(月30単位)も54.6%と、半数近くの施設が取り組んでいない。約半数の施設が取り組んでいない理由として、歯科衛生士がいないことを理由に挙げている。

月30単位の「口腔衛生管理体制加算」は、月1回以上歯科医師や歯科衛生士から技術的な助言・指導を受けた介護職員が、利用者に対して日常的な口腔ケアを提供するのが算定要件となっている。より加算が高い月110単位の「口腔衛生管理加算」は、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、利用者に対して月4回以上の口腔ケアを行う必要がある。特に月110単位の「口腔衛生管理加算」は歯科衛生士が少なくとも非常勤で勤務する必要があるため、人材を確保できなければ算定要件を満たすのは難しい。介護施設に就業する歯科衛生士は増加傾向にあるが、絶対数が少ないのが現状だ。

歯と口腔の健康を保つことは、健康寿命の延伸にもつながるため、結果的に施設の価値を高めることにもつながる。歯科専門職による定期的な口腔ケアを実施している施設のほうが、肺炎の発症率が低いというデータもある。算定要件の厳しさの割に、単位数が少ないという意見も確かにあるが、施設のブランディングを考慮すれば、口腔ケアに力を入れるメリットは小さくない。歯科衛生士資格を持ちながら、出産・育児などが理由で仕事から離れている人などをターゲットに、積極的な採用を展開するのもひとつの戦略と言えよう。

◆今年度の「介護従事者処遇状況等調査」 新加算による変化に焦点
届出状況のほか、届け出を行わない理由も調べる

――厚生労働省
6月2日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会が開かれ、今年度の「介護従事者処遇状況等調査」について協議。今年度の介護報酬改定で拡充された「介護職員処遇加算(I)」について、届出状況や届出が行われない理由などを把握することが確認された。調査は昨年同様、今年10月に実施され、結果は来年3月に公表される。

 介護職員の処遇については、これまで何度も改善策が講じられてきた。2009年度に介護職員処遇改善交付金が導入されて1人あたり月15,000円相当額が交付。しかし、これは公金で100%賄う方式だったため、年間約2,000億円の支出が必要であり、財政が厳しいことを理由に2011年度で廃止された。そこで、翌2012年度から導入されたのが介護職員処遇改善加算。介護事業所に支払われる介護報酬に加算される方式で、公金だけでなく利用者負担分も組み込まれている。

 加算区分は段階的に積み増しされ、今年4月からは全部で5区分となっている。今年4月に積み増しされたのが「介護職員処遇加算(I)」だ。従来、もっとも加算されていた区分は「賃金体系の整備」「キャリアアップ機会の確保」「賃金改善以外の処遇改善の実施」が用件となっていたが、「定期昇給」が新たに加わった。すべてを満たしていれば、月額37,000円相当額が加算される仕組みとなっている。

 新たに加わったこの「介護職員処遇加算(I)」の状況を明らかにするのが、今回の調査の眼目と言っていいだろう。調査項目には「届出状況」および、「届出を行っている事業所の昇給の仕組み」、そして「介護職員処遇加算(I)」の下部区分である「介護職員処遇加算(II)」の届出を行っている事業所には、「『介護職員処遇加算(I)』の届出を行わない理由」も調べる。

とりわけ、定期昇給に関しては各事業所の組織マネジメントに関わる部分だけに、どのような結果が出てくるか注目される。調査結果が公表されるのは来年3月のため、来年度の介護報酬改定に影響することはないが、結果次第では加算用件の見直しや拡充を行う可能性も出てくるのではないか。

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お電話
  • 【フリーダイヤル】0120-136-436
  • Tel.06-6222-0030
執務時間
  • 月曜日~金曜日
    午前9:00~午後5:30

お問い合わせメールフォーム

些細なことでも気兼ねなくお問い合わせください。「はい、日本クレアス税理士法人です」と電話を取ります。その後に「ホームページを見て」と言っていただけるとスムーズに対応できます。