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医療経営情報(2017年10月5日号)

2017/10/16

◆ レセプト、書類の添付は廃止 摘要欄はテキスト形式から選択式に 患者住所の郵便番号と氏名のカタカナを記載する方針も

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
99月27日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、診療報酬請求に関わる事務作業の効率化・合理化について議論を展開。厚労省は、レセプトについて書類の添付を廃止するほか、摘要欄をフリーテキスト形式から選択式へと見直す方針も明らかにした。また、患者の住所情報がないことについて、住所の郵便番号と氏名のカタカナ記載を様式とすることも提案している。

医科のレセプトには、昨年4月時点で添付資料を求める項目が約20あるほか、摘要欄にフリーテキストの記載が必要となっている項目が約350ある。効率的な事務処理を妨げ、医療機関側の負担となっていることは明白だった。

そこでまず、添付資料については「不要なものを廃止する、もしくは添付を廃止」して、レセプトへ記載することを検討したいとした。摘要欄は、そもそも算定要件を満たしているかどうかを判断するためのものであるため、留意事項通知等で算定可能な場合が明示されていることも踏まえ、選択式にすることを提案している。

患者住所の郵便番号とカタカナ記載をレセプト様式に盛り込むのは、医療の地域差についての分析・評価をより正確なものにする狙いがある。現在のレセプトには、保険者番号のほか氏名、生年月日のみが記載されていないため、どの患者がどの地域に住んでいるのかがわからない。人口の多い都市部に大病院が集中し、過疎地域は医療機関の数自体が少ない現状を鑑みれば、地域差を正確に把握して的確な医療政策を展開すべきなのは明白であり、そのために必要な措置だといえる。氏名のカタカナ記載を加えるのは、介護保険の受給者台帳がカタカナ表記であるから。医療と介護の情報を連携させ、同一患者の分析をより正確なものにするうえでこちらも合理的な提案だといえよう。

ただし、記載内容が増えるため、現場の負担を増加させる可能性もある。レセプトコンピュータも、住所を入れるだけで自動的に郵便番号が表示される製品もあるが、古い機種だと対応していないものもあり、買い替えやソフトの更新が必要になる医療機関も出てくるだろう。そのあたりの対策をどのように講じるかは、今後検討していく必要があるのではないだろうか。

 

◆ 一般病棟入基本料「重症度、医療・看護必要度」見直しに反対意見 現場での混乱回避のため 将来的にはDPCデータへ置き換える方向

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会
9月27日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会が開かれ、入院医療等の調査・評価分科会のこれまでの検討状況について中間取りまとめが報告された。一般病棟入院基本料の主要な評価指標となっている「重症度、医療・看護必要度」は、項目の組み合わせなどが検討されてきたが、次期診療報酬改定での変更を反対する意見が出ており、今後の焦点になってきそうだ。

「重症度、医療・看護必要度」は、急性期の入院医療における医療・看護の提供量を示す指標。7対1入院基本料の施設基準として導入されたのは2008年度の診療報酬改定(当時は「重症度・看護必要度」)で、10対1も2010年度改定から測定されることが要件となっている。その後、2014年度改定、2016年度改定で立て続けに見直しが行われている。

次期改定での変更に反対意見が出ているのは、この相次ぐ見直しが原因だ。2016年度改定後は、項目追加によってそのための研修や入力作業が増加し、現場の負担が増したとする声も多い。ようやく新たなフォーマットに現場が慣れてきたにもかかわらず、また見直しをすれば混乱を招く恐れがある、という意見があるのもうなずけよう。

一方、将来的にDPCデータに置き換える方針に対しては、異論が出ていない。これは、看護職員が毎日測定する必要がある「重症度、医療・看護必要度」の入力作業に相当な負担がかかっているためだ。DPCデータの提出は3カ月に1回であるため、入力頻度を減らせると見ての容認姿勢だろう。しかし、DPCデータとは薬剤の使用量や手術の評価機関などの定義が異なる部分があるほか、7対1と10対1で活用方法が異なる。見直しの方向次第では、10対1の要件が見直されてカットオフ基準が低く設定され、結果的に入院基本料引き下げにつながるおそれがあるのも、反発を生んでいる理由のひとつだ。

この問題に関しては、9月4日に一般社団法人日本病院会および公益社団法人前日本病院会、公益社団法人日本看護協会の3団体が「次期改定での改変を避けてほしい」と要望書を提出。日本病院会や全日本病院協会などが参加する日本病院団体協議会(日病協)は、次期改定でDPCデータに置き換えた場合も、「重症度、医療・看護必要度」を評価指標として残し、医療機関側が選択できるようにすべきだと妥協案を提示している。これらを受け、厚労省が今後どのような提案をしてくるか、引き続き注視していきたい。

 

◆ がん、脳卒中の評価項目を1項目に 特に評価が必要な項目は2ポイント     機能評価係数Ⅱの地域医療係数見直し プラス緩和も1年間の激変緩和措置を

――厚生労働省 診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会
99月28日、厚生労働省の診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会が開かれ、機能評価係数IIの「地域医療係数」見直しについて議論を展開。厚労省は、がん、脳卒中の評価項目を1項目に統合するほか、特に評価が必要と考えられる項目については、2ポイントとする具体案を示した。また、調整係数を機能評価係数IIへと置き換える際の激変緩和措置について、プラス緩和も1年間とする方針を明らかにしている。

機能評価係数IIは、急性期入院医療の評価として導入された。現在は「保険診療係数」「効率性係数」「複雑性係数」「カバー率係数」「救急医療係数」「地域医療係数」「後発医薬品係数」「重症度係数」の8項目から算出されている(「保険診療係数」は当初「データ提出係数」だったものが拡充され名称変更となった)。この係数が大きくなるほど、1日あたりの診療報酬単価を高く請求できる仕組みだ。

この日俎上に載せられた「地域医療係数」は、疾病領域によって重複する項目があることや、地域にとって必要な項目について体制を整えないことも可能だとする指摘があり、見直しが検討されていた。そこでまず厚労省は、評価の考え方として、評価項目の数やポイントの付け方の変更を提案した。具体的には、現在2つの評価項目が設定されているがん、脳卒中、災害時の医療を1項目に整理・統合。これまで、地域医療計画の5疾病・5事業の診療内容に関連する12項目は、1項目につき最大1ポイントとして評価していたが、各指数の実績から特に評価が必要と考えられるものは2ポイントにするとしている。

がんについては、「B005-6-2 がん治療連携指導料」を評価項目から削除する方針も示された。これは、他院で策定した治療計画で診療する場合も算定できるため、急性期の医療機関の評価としては適切でないという判断だ。脳卒中については、評価項目を統合するにあたって、地域のネットワークに参加する「専門的医療を包括的に行う施設」と「専門的医療を行う施設」を段階的に評価する方針も示している。

その他、心筋梗塞等の心血管疾患は、急性大動脈解離について、一定数以上の手術実績を「急性心筋梗塞の24時間診療体制」の評価項目に追加する案も提示。これも脳卒中と同様の段階的な評価とする方針だ。精神疾患については、より重篤な診療実態がある「A311-3 精神科救急・合併症入院料」をより高く評価することを提案した。災害時の医療に関しては、災害拠点病院の評価にBCPの策定の有無を追加したいとし、新型インフルエンザ等対策に関わる指定地方公共機関の指定は見送るとしている。

 

◆ 臨床研修、大都市圏の募集定員はさらに圧縮へ     地域枠従事要件に違反した場合は補助金を減額

――厚生労働省 医道審議会医師分科会医師臨床研修部会
99月27日、厚生労働省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会が開かれ、大都市以外の地域での医師の確保・定着を進めるための臨床研修のあり方について議論を展開。医師の偏在化を避けるため、大都市圏の募集定員をさらに圧縮させるほか、地域枠従事要件に違反した場合は臨床研修費補助金を減額させるとともに、募集定員を削減する罰則を設ける方針が固まった。罰則適用の開始は、十分な周知期間を設けるため2019年度からとなる。

医師数は、人口の多い地域に偏りがちな傾向がある。厚労省の調査によれば、人口10万人あたりの医師数がもっとも多いのは京都府の307.9人、次いで東京の304.5人。もっとも少ない埼玉は152.8人、茨城は169.6人となっており、2倍近い地域格差が存在しているのが現状だ。

この傾向を助長させているのが、現在の医師臨床研修制度だ。かつては各大学がいわゆる“医局人事”で各地域に医師を派遣していたが、現在は研修内容や施設が充実している都市部が選ばれることが多くなっている。そして、臨床研修修了後はその都道府県でそのまま勤務するケースが多い。この日厚労省が提示した資料によれば「出身大学と同じ都道府県」「出身大学と異なる都道府県」で臨床研修を受けた場合、それぞれ85%、84%がその都道府県で勤務を開始している。また、出身地の都道府県で臨床研修を受けた場合、「出身地の大学」出身者は90%が、「出身地以外の大学」出身者でも79%が出身地で勤務している。逆に、出身地の大学に進学して臨床研修を別の都道府県で受けた場合、勤務先に出身地を選んだ人は36%と低く、臨床研修をどこで受けるかが勤務先選びに大きく影響していることは明らかだ。これは、研修医の採用実績にも現れており、人口あたり医師数が多い4都府県の平均採用率は90%に達しているが、医師数が少ない4県の平均採用率は50%にとどまっている。

そこで、都道府県が臨床研修病院の指定や定員設定に対して主体的に関わることで、格差是正を進めようというのが厚労省の考え。医師法上、募集定員の調整は都道府県が行えることとなっているが、臨床研修病院の指定は厚生労働大臣が行うことが定められているため、法改正も視野に入れて検討を進めていくことになりそうだ。

 

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