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医療経営情報(2018年1月25日号)

2018/2/5

◆地域包括診療料の算定要件を緩和 常勤医師は1名でもOKに
在宅医療の提供はより高く評価 かかりつけ医機能強化のため

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
 厚生労働省は、1月24日の中央社会保険医療協議会総会で、地域包括診療料等の算定要件を緩和する方針を明らかにした。かかりつけ医機能を強化するのが目的。在宅医療を提供している医療機関への評価を充実させるような設計変更もなされる。また、地域包括診療料等の算定患者が入院し、入院先の医療機関と医薬品の適正使用に関する連携を行った場合の加算も新設される。

 地域包括診療料等は、かかりつけ医機能を評価する診療報酬のこと。「地域包括診療料」のほか「認知症地域包括診療料」「地域包括診療加算」「認知症地域包括診療加算」がある。
これまで、常勤医師2名以上が算定要件となっていたが、常勤医師1名と非常勤医師の組み合わせでも算定できるように緩和される。

 また、在宅医療を提供している医療機関を、その実績によって段階的に評価。「当該医療機関での外来診療を経て訪問診療に移行した患者数」「直近1ヶ月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が○%未満」(○%の具体的数値は今後の議論で決定される)の双方を満たした場合、より高く評価される内容となっている。

 さらに、これまで患者の管理や服薬指導には、「すべての受診医療機関の把握」「一元的な服薬管理」といった厳しい要件が定められていたが、「必要に応じ、医師の指示を受けた看護師等が情報の把握等を行うことも可能」との文言を追加。かかりつけ医療機関に十分な患者管理を求めるのは変わらないものの、医師以外のスタッフが代行できることを示したことで、事実上の要件緩和を実現させたといえる。現在、地域包括診療料を届け出ている医療機関は約5,000カ所にとどまっているが、この措置によって届け出数が増えることが期待できよう。

 かかりつけ医の初診料を高く評価する方針も固まった。厚労省によれば、初診時間が再診よりも長い傾向にあることが同省調査で明らかになったことによる措置。点数の引き上げではなく「機能強化加算」を新設することで、かかりつけ医のみを評価する設計にした。診療所または200床未満の保険医療機関が対象。地域包括診療料等、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院のみ)を届け出た診療所以外は200床未満の保険医療機関が対象となる。

◆紹介状なしで大病院受診時の定額徴収制度を厳格化
従来の500床以上から400床以上へと対象範囲を拡大

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
 厚生労働省は、1月24日の中央社会保険医療協議会総会で、紹介状なしで大病院を受診した場合に定額負担を義務付けている範囲を拡大するとした。従来は500床以上が対象だったが、400床以上となる。約150の病院が新たに対象となる見込みだ。

 これは、病院と診療所が機能を分担して連携を図り、大病院の一般外来診察を減少させる「病診連携・機能分化」の一環。一般外来診察は診療所に、大病院は専門外来や重症患者対応と機能を分けることで、効率的な医療の実現を目指す施策だ。医療を効率化することで、膨らみ続ける社会保障費を抑制する意図もあり、2016年度から特定機能病院および500床以上の地域医療支援病院で、最低5,000円(消費税別、再診は2,500円)を徴収することが義務付けられるようになった。

 この定額徴収制度を導入したことで、機能分化が進んでいることが数字でも明らかとなっている。厚労省調査によれば、導入前の2015年10月は500床以上病院の紹介状なし外来患者割合が42.6%だったが、導入半年後の2016年10月には39.7%となった。2.9ポイントではあるが減少しているため、対象範囲を拡大すれば、さらに「病診連携・機能分化」が進むことが期待できるというわけである。中央社会保険医療協議会では、「200床以上まで拡大するべき」といった意見もあがっていたが、そこまでドラスティックな変更とはならなかった。なお、自治体による条例制定が必要な公的医療機関は、条例が制定されるまでの期間を考慮され、6カ月の経過措置が設けられる。

 この定額徴収制度のみにとどまらず、大病院の定義ともなっていた「500床以上」が要件となっている診療報酬は、すべて「400床以上」に変更となる方針も明らかとなった。具体的には初診料、外来診療料、在宅患者緊急入院診療加算、地域包括ケア病棟入院料、在宅患者共同診療料が対象。

◆政府、「医療費の地域差半減」への取り組みを加速させる方針
「全世代型の社会保障」の実現に向けて強い意気込みを示す

――経済財政諮問会議
 政府は1月23日に経済財政諮問会議を開催。民間議員が今年前半の主要検討課題を提示した。医療分野では「全世代型の社会保障」の実現に向け、「医療費の地域差半減」を第一に挙げており、取り組みを加速させていくべきだと提言している。

 公的な医療サービスは全国一律の価格となっているが、1人当たり医療費の地域差が生じているのが実状。厚生労働省の調査によれば、入院期間の長さや外来受診回数、薬剤使用量などで地域差があり、それが医療費の格差につながっていることは明白。社会保障費お自然増を最低限にとどめるためにも、地域差を解消して医療費の伸びを抑制しようというわけだ。

 「医療費の伸びは止まったのでは」と訝る向きもあるだろう。確かに、昨年9月に発表されたように、2016年度の概算医療費は14年ぶりに減少している。しかし、これは高額がん治療薬オプジーボを半額に緊急値下げしたことが奏功した結果であり、減少幅も0.4%とわずかだった。41兆2,685億円と依然として40兆円超をキープしていることもあり、厚労省は「増加傾向に変化はない」と悲観的な見通しを示している。

 では、地域差解消にはどのような施策を実行するべきなのか。単純に地域差の要因を突き詰めていけば、入院や外来受診、薬剤の費用を減らせばいい。しかし、医療機関が少ない地域では、通院に多大な負担がかかることもあって入院期間が長引いたり、一度の外来受診で多くの検査を実施したりせざるを得ないため、どうしても費用が嵩んでしまう傾向がある。都道府県別に見た地域差よりも、市区町村別のほうがより格差が大きくなるのはそうした事情があるからだ。となると、検査や投薬の重複を防ぎ、できるだけ効率的な医療の実現を目指すのが有効だろう。そのためには、診療内容の管理が容易な電子カルテの導入促進など、ICT環境の整備に力を入れていくことも重要となるのではないだろうか。

◆医療広告の省令案固まる 自由診療料金のHP掲載を義務付け
ビフォーアフター写真は条件付きで使用可能に

――厚生労働省 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会
 厚生労働省は、1月24日の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で医療広告に関する省令案を提示。同検討会の了承を受け、今年6月に施行されることが決まった。ホームページを開設している医療機関は、自由診療の料金やリスクについての記載が義務付けられるほか、「患者の体験談」の掲載ができなくなる。

 これまでも、医療機関の広告については、他の病院や診療所と比較して優良であることを伝える「優良誤認」や「誇大表示」、「客観的な事実であることを証明できない内容の表示」などが禁じられている。今回新たに加わった自由診療の料金やリスクの記載および「患者の体験談」は、いずれも従来の禁止事項に該当しているが、改めて省令に規定されたのはなぜだろうか。

 最大の理由は、ホームページが広告媒体の対象となったことだ。従来、ホームページは「情報提供媒体」と位置づけられ、広告規制の対象外となっていた。しかし、美容医療サービスに関する消費者トラブルの急増を受け、2015年7月に内閣府消費者委員会が規制対象とすることを建議。昨年6月の改正医療法成立により、広告媒体として扱われるようになった。以来、同検討会ではホームページの定義や広告禁止事項についてさらに検討を進めてきた。昨年11月の会合で新たな医療広告ガイドライン案の大枠が決まり、パブリックコメントの募集を経て、今回の省令案決定に至った次第だ。

 注目を集めていたいわゆるビフォーアフター写真は、広告自体は可能となった。省令案は「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと」とされ、「誤認させるおそれがある」がどこまでを指すか不透明だが、新ガイドラインで「通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない」と明記。つまり、十分な説明を添えればビフォーアフター写真を掲載できるということであり、むしろ規制緩和に近い結論に至ったといえる。ただし、省令にも記載されたように費用やリスクについての説明は不可欠であり、その表記には従来以上に留意しなければならないのではないか。

 また、今回の会合では、集まったパブリックコメントの概要および、それに対する回答も提示。とりわけ目を引いたのは、SNSに対する考え方だ。「医院が運営するSNSはインターネット上の広告に含まれる」という見解を示しており、FacebookやInstagram、Twitterなどでの投稿も広告とみなされることとなる。たとえば、治療後の患者の写真などをなにげなくアップしてしまいがちだが、「誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真」に該当する可能性が高いため注意する必要がある。少なくとも治療料金やリスクに関する文言は定型で用意しておき、写真をアップするときに添えられるよう準備しておくべきだろう。

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