ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2018年7月6日号)
◆「身体拘束廃止未実施減算」は特養以外にも適用 厚労省がQ&A第1弾の説明を補足 「夜勤職員配置加算」も
――厚生労働省老健局老人保健課
厚生労働省老健局老人保健課は、7月4日に「介護保険最新情報Vol.662」を発出。「身体拘束廃止未実施減算」は介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)以外の施設にも適用されることを明示した。
「身体拘束廃止未実施減算」が適用されると明示されたのは、特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設、地域密着型特定施設入居者生活介護および認知症対応型生活介護。後述する対策検討委員会を設置しなければならないため、減算が行われるのは施行から3カ月後となっている(4月に施行されたため、7月1日から適用がスタートしている)。
「身体拘束廃止未実施減算」は、今年度の介護報酬改定で見直されたポイントのひとつ。入居者の徘徊を防ぐため、いすやベッドに縛り付けるような身体拘束の機会を可能な限り減らすことを目的に「適正化の強化」が行われた。その結果、身体拘束を行う場合は入居者の「心身の状況」や、拘束せざるを得なかった理由を記録することが必要となり、適正化のための対策検討委員会を3カ月に1回以上開催しなければならないこととなった。これらを実施しない事業所は「身体拘束廃止未実施減算」が適用される。減算率も見直され、従来は1日5単位減算だったのが、1日10%減算されることとなった。
しかし、なぜこのタイミングで適用対象の施設を通知したのか。それは、3月に発出した今年度介護報酬改定のQ&A第1弾が、特養のみに適用されると受け取れる表現だったからだ。「身体拘束廃止未実施減算」の説明部分で、対象施設を「【介護老人福祉施設】」としていたため、それ以外の施設は対象外とも判断できる。すでに適用がスタートしているタイミングとなったが、事業所からのクレームに対応する意味も含めての通知となったというわけだ。
なお、「夜勤職員配置加算」についても同様に「【介護老人福祉施設】」のカテゴリーになっていたため、介護老人福祉施設(特養)のほか地域密着型介護老人福祉施設および短期入所生活介護にも適用されることを明示している。これらの事業所の関係者は、算定ミスがないよう念のため注意する必要があるだろう。
◆総務省の有識者会議 「圏域」単位での医療・介護サービスを提言
東京の“県境越え”介護施設利用率の高さも背景に
――総務省 自治体戦略2040構想研究会
総務省は、7月3日に「自治体戦略2040構想研究会」が取りまとめた第二次報告を公表。医療・介護サービスの提供を、現在の都道府県および市区町村単位から「圏域」単位にするべきとの提言が盛り込まれている。すでに東京では介護施設や療養病棟の利用が他県に依存している現状も明らかにされた。
慶應義塾大学商学部教授の清家篤氏が座長を務める同研究会。「2040」は、高齢者人口がピークを迎える2040年頃のこと。その時期に直面する自治体行政の課題を整理し、今後のあり方や対応策を提示することを目的としている。
高齢者人口が増えることで、介護関連の課題が増えることは自然の流れ。介護人材の不足が深刻化していることは、厚生労働省が2025年時点で約38万人不足するとの推計を出していることからも明らかだが、構造的な問題も多数抱えている。とりわけ三大都市圏はその傾向が強く、高齢者人口の増加ペースも他地域と比べて速い。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年までに東京圏では約270万人、大阪圏で約70万人、名古屋圏で約50万人増加するとされている(いずれも対2015年比)。
そうなると、高齢者の利用率が高い療養病棟や介護施設を受け皿として用意しなければならないが、同研究会は現時点でもすでにパンク状態にあることを指摘。東京23区の療養病棟患者の多くが、周辺三県(千葉・神奈川・埼玉)および多摩地区の病院で入院しているほか、介護施設も他県のそれの利用率が高い。また、日本創生会議首都圏問題検討分科会は、現在は東京23区のニーズを周辺三県でカバーしているものの、2025年にはその三県もカバーしきれなくなると推計。そうした状況に対応するため、都道府県を超えた「圏域」によるマネジメントを検討すべきだとしている。
現状、東京圏には「九都県市首脳会議」が県域を超えた行政課題に関する連絡調整を行っている。同研究会は「利害衝突がなく連携しやすい分野にとどまらず、連携をより深化させ、圏域全体で負担の分かち合いや利害調整を伴う合意形成を図る必要がある」とし、圏域全体のマネジメントを支えるプラットフォームの必要性を訴えている。その取り組みが現実化すれば、他地域がロールモデルと設定することもできるため、早期に具体化する必要があるだろう。事業者レベルでも、今から圏域を意識した連携や意見交換を事業者間で行い、管轄エリアの変更に即対応できるようにすべきではないだろうか。
◆6月最終週の熱中症救急搬送、前週の5倍以上に 昨年同時期よりも2,000人以上増加
――総務省消防庁
7月3日、総務省消防庁は「6月25日~7月1日」の全国の熱中症による救急搬送人員が3,473人だったと発表。前週にあたる6月18日~6月24日が667人だったため、5倍以上に増えた計算となる。
昨年の同時期は1,221人だったため、それと比べても3倍近い数値。しかし、この2カ月間(4月30日~7月1日)で見ると、昨年が7,355人だったのに対して今年は8,488人と1,000人強しか増えておらず、6月25日~7月1日の数がかなり多かったことがわかる。6月29日に関東甲信地方が統計史上でもっとも早く梅雨明けするなど、例年よりも早いタイミングで気温の高い日が続いたことが影響しているとみられる。ちなみに都道府県別でもっとも多かったのは埼玉県の334人、次いで東京都の278人、大阪府の248人、愛知県の192人、千葉県の168人、神奈川県の154人、兵庫県の149人となっている。
年齢別に見ると、全体の53.2%にあたる1,848人が満65歳以上の高齢者。傷病程度を見ると、全体の63.2%が軽症だが、入院が必要となる中等症や重症が計36%もいる。死者も3人出ており、軽んずることのできない状態だといえる。
発生場所で最多だったのが住居である点にも着目したい。1,323人と全体の38.1%を占めている(屋外や道路は計29.6%)。室内にいても熱中症にかかる危険性が高いことを証明しており、エアコンを適切に使用したうえで、たとえ室内にいても水分補給を頻繁に行うことが重要だということだ。
これから7月、8月を迎えるにあたって厳しい暑さが続くことが予想される。また、湿度が上がることで熱中症のリスクは高まるため、大雨が続く西日本はより注意する必要があるだろう。介護施設でも、スタッフ間に注意喚起を促すなど、通常の熱中症防止策だけでない警戒が求められよう。
◆「イリーゼ」運営会社に景品表示法違反で措置命令 「終の棲家として」のキャッチコピーを問題視
――消費者庁
消費者庁は7月3日、有料老人ホーム「イリーゼ」を運営するHITOWAケアサービス株式会社に対して措置命令を行った。「イリーゼ」のパンフレットで入居契約解除の可能性を明示しなかったことが、景品表示法に違反するとされた。消費者庁はHITOWAケアサービスに対し、「景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること」および「再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること」、「今後、同様の表示を行わないこと」を命じている。
HITOWAケアサービスは昨年11月に社名変更。それまでは長谷川介護サービス株式会社として事業を行ってきた。主力事業である「イリーゼ」は、現在全国106カ所に展開。7つのグループ会社も抱えている。
「イリーゼ」のパンフレットで問題視されたのは「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」とのキャッチコピー。実際の契約時の重要事項説明書には、入居者が他の入居者や従業員に危害を及ぼすおそれがある場合、入居契約を解除する可能性を示しているにもかかわらず、「終の棲家」と表現することで永住を保証するかのように記載したことが景品表示法に抵触した。
消費者庁が今回動いたのは、有料老人ホーム入居後の契約トラブルが発生し始めていることの証左でもあるだろう。とはいえ、パンフレットに例外規定を盛り込んでいないことでここまで重い処分を下された事態は、すべての介護サービス事業者が重く受け止めるべきだ。
現状、介護関連の広告規制は曖昧な状態にある。厚生労働省は介護保険開始時に「広告できる事項」を示しているものの、「虚偽であってはならない」「医療の内容は広告できない」程度の規制にとどまっている。しかし、医療広告は今年からウェブサイトやバナー広告も規制対象となったほか、Q&A集も作成し直すなど表現の細部まで規制を実施。医療広告規制が厳しくなった背景には、美容医療トラブルで消費者庁が動いたことが背景にあったことを踏まえれば、今回の事件を契機に今後、介護の広告規制が厳しくなることも視野に入れるべきだろう。