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医療経営情報(2018年8月30日号)

2018/9/18

◆オプジーボ、3度目の薬価引き下げ 現行から37.5%ダウン 用法用量の変更が再算定の対象に 薬価見直しの新ルール初適用

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省の中央社会保険医療協議会は、8月22日の総会でがん免疫治療薬「オプジーボ」(小野薬品工業)の薬価引き下げを承認した。20mg1瓶が57,225円から35,766円に、100mg1瓶が278,029円から173,768円となり、現行薬価から37.5%の大幅引き下げとなる。それまで患者の体重1kgあたり3mgとしていたのを、体重に関係なく1回240mgに用法用量を変更したことから用法用量変化再算定品目の対象となったためで、11月1日から適用される。

オプジーボの薬価引き下げは、今回で3度目。2014年9月に薬価収載された時点では100mg1瓶が729,849円だったが、昨年2月の緊急薬価改定で特例拡大再算定が適用され50%に引き下げられて364,925円となった。今年4月には、用法用量再算定や費用対効果評価などの適用により278,029円まで引き下げられたばかり。さらに、薬価制度改革によって、年間350億円以上の販売額となる医薬品は2年に1回の薬価改定とは別に、年4回の新薬薬価収載のタイミングで薬価を見直すルールに変わったため、今回の引き下げとなった。その結果、薬価は当初の薬価よりも実に556,081円ダウン。下げ幅は約76%であり、「革命的ながん新薬」とまで評価された開発元の小野薬品工業は、大きな痛手を受けることとなる。

薬価収載からわずか4年という短期間でここまで薬価を引き下げられたのは、皮肉にもオプジーボが優れた薬剤であるからだ。昨年2月の50%引き下げは、当初承認を受けていた悪性黒色腫(メラノーマ)に加え、非小細胞肺がんの追加承認を受けたことにより、対象患者数が数百人から数万人に増えたことが影響している。当時、すでに他のがんなどにも有効性が認められており、患者数が10万人規模となることが予想されたため、慌てた政府が動いた形だ。10万人規模となれば、当初の薬価だと3兆5,000億円の医療費となってしまうため、政府の対応も理解できなくはない。

しかし、オプジーボは開発から実用化まで約15年かかったといわれている。「革命的ながん新薬」と称賛を受けるまでに、膨大なコストが費やされたことも忘れてはならない。金額が大きいためやり玉にあげられやすい新薬だが、医療の進化および健康寿命の延伸には欠かせない要素でもある。世界の製薬大手が新薬開発に行き詰まっている現在、日本企業の開発力を高めていく価値の大きさを再認識し、開発のモチベーションを下げないような施策が必要なのではないだろうか。

◆厚労省、医療広告ガイドラインのQ&A集を公表
ウェブサイトが規制対象となり、より厳しい内容に

―厚生労働省
厚生労働省は8月10日、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて」と題した事務連絡を発出。都道府県および保健所設置市、特別区の衛生主管部に対し、今年6月より見直された医療広告規制について、管轄下の病院や診療所などへ周知徹底するよう呼びかけた。同時に、この事務連絡を厚労省のウェブサイト上にもアップしている。

◆厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

医療広告に関する規制は、昨年10月の医療法改正によって大きく変わった。それまで対象外だったウェブサイトが規制対象となったからだ。医療機関が運営するウェブサイトのみならず、バナー広告やメールマガジンも対象となっている。また、第三者が運営している「口コミ情報ランキングサイト」やフェイスブック、ツイッターといったSNSでも、医療機関が広告料などの費用を負担して掲載を依頼していると判断されれば、規制の対象となる。いわば野放しの状態だったウェブの世界にもメスが入ったことで、医療機関にとっては記載内容の修正や広告戦略の見直しを余儀なくされている状況だ。

さらに厚労省は、「医療機関ネットパトロール」も立ち上げており、医療広告ガイドラインに違反している疑いのあるウェブサイトを通報するよう一般に呼びかけている。ここまで本腰を入れて規制に取り組んでいる背景にあるのは、美容医療サービスに関する消費者トラブルの多さだ。とりわけ問題視されてきたのが、治療効果を視覚的に伝える「ビフォーアフター写真」と、体験談によって優位性を訴求する「口コミ」である。

「ビフォーアフター写真」については、原則的に広告での使用は禁止となった。ただし、具体的な治療内容や副作用、リスクといった詳細な説明を添えた場合は対象外となっているため、まったく使えないわけではない。一方で、改正医療法には「患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと」としており、修正・加工した写真を使用することは認められないと考えるべきだろう。

「口コミ」に関しては、改正医療法で「治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」となっており、全面的に禁止されているように見える。しかし、6月28日に開かれた「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」では、「危険な治療を提供している医療機関を口コミで知ることで、患者にとって利益になるだけでなく、医療機関への抑止力にもなる」と構成員が主張。そこで、Q&A集では「医療機関への誘引性が認められる場合」などと条件を限定。有利誤認にあたらない口コミや体験談については、ウェブサイトへの掲載ができることになった。とはいえ、口コミは少なからず誘引性を持つ性質を持つため、事実上医療機関のウェブサイトでの掲載は禁止されたと見ていいだろう。

 その他、注目したいのは「新専門医制度」の専門医資格の掲載ができないこと。これは、2013年に通知された「広告可能な医師等の専門性に関する資格名等について」に記載されていないのが理由。今後掲載可否について検討するとしているため、そのうち広告可能となる可能性が高いが、現時点では広告できないため掲載していないか注意が必要だ。

医療機関を経営するうえで、程度の差はあっても広告は必要不可欠なもの。経営サイドはもとより周辺の事業者も、ガイドラインおよび今回公表されたQ&A集を細部までチェックし、適切かつ効果的な広告戦略を練り直すことが求められる。

◆費用対効果評価、疾患ごとに価格を算出して平均価格を採用        複数疾患に適応がある場合を考慮 試行的導入とは異なる方法に

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会
 厚生労働省は8月22日、中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会で、複数疾患に適応がある場合、各ICER(増分費用効果比)を統合せずそれぞれ算出し、その加重平均を価格として採用する方針を打ち出した。すでに実施されている試行的導入では、複数のICERを1つに統合したうえでその加重平均から代表値を算出しており、本格導入では異なる方法を用いることとなる。

 「複数疾患に適応がある」技術とは、たとえばがん免疫治療薬「オプジーボ」のように、悪性黒色腫(メラノーマ)だけでなく非小細胞肺がんにも効果を発揮する医薬品を指す。試行的導入で採用されている「ICERを1つに統合する」方法だと、仮に「メラノーマの場合は費用対効果が高い」「非小細胞肺がんの場合は費用対効果が低い」ことがわかっていても、疾患別の評価ができない。その点、適応疾患ごとに価格を算出する方法ならば、各疾患におけるその医薬品や医療技術の価値を価格に反映できるほか、市場の平均価格との整合性もとれて、より公正な評価が可能になるというわけだ。海外では、オーストラリアなどでこの方法が採用されている。

 ICERとは、新たな技術にかかる費用と既存技術の費用との差をもとに、費用対効果を数値化する算出方法。ただし、分析に適したデータが複数ある場合もあり、絶対的な評価を導く方法とは言い難い。そのため厚労省は、科学的に妥当な分析が行われることを前提としたうえで、幅をもった評価を許容する方針も明らかにしている。

費用対効果評価制度は、高額医療を保険収載するにあたり、適正な価格設定を行うための仕組み。医療費を含む社会保障費を抑制する効果が期待され、2012年5月から導入が検討されてきた。2016年度に試行的導入が決定し、すでに保険収載されている13品目を対象に分析を進めつつ、本格導入に向けた検討が進められている。当初は今年度から制度化される予定だったが、医薬品や医療機器などの費用対効果を導き出す「総合的評価(アプレイザル)」のために基準値を決めるうえで必要な「支払い意思額調査」が実施できず、昨年12月に先送りとなった。結局、6月に開催された部会で「支払い意思額調査」は実施しないと決定。各品目のICERをどのように算出するか、そしてその基準額をどこに定めるかが焦点となっており、この日の部会ではまず算出方法について固めた形となった。

◆遠隔医療関連システム市場、2023年には2倍以上に拡大 2023年国内市場予測 手術支援ロボットも同等の伸びに

――株式会社富士キメラ総研
 国マーケット調査を手がける株式会社富士キメラ総研は、8月16日に医療関連のシステムやソリューションについてまとめた「メディカルソリューション市場調査総覧2018」をリリース。遠隔医療関連システム/サービスの市場は、2023年までに現在の2倍以上へと拡大すると予測した。手術支援ロボットの市場も、やはり2倍以上に拡大するとしている。

 富士キメラ総研によれば、2018年の遠隔医療関連システム/サービスの市場規模は133億円となる見込み。見込み通りとなれば、2017年比は110.8%。2023年予測は251億円で、2017年に比べ2.1倍となる。遠隔医療関連システム/サービスでもっとも規模が大きいのは遠隔画像診断サービスで、2017年は98億円と8割以上を占めた。

 2018年は遠隔医療にとって分岐点となったタイミング。オンライン診療が保険適用されたこともあり、参入メーカーが急増している。今後、システムを新規導入する医療機関がさらに増えることが予測されるため、保守サービスの市場拡大も望める。また、電子カルテシステムなど他の医療システムとの連携が強まるほか、地域包括ケアシステムの構築が強化されることも踏まえれば、より一層の需要拡大が見込まれる。

 一方、手術支援ロボットの2018年市場規模は64億円(2017年比106.7%)。富士キメラ総研は2023年に140億円まで拡大すると予測している。2017年に比べると2.3倍の伸びだ。この予測は、ロボット支援下内視鏡手術システム「da Vinci」の導入が進んでいることが根拠にある。「da Vinci」は、もともとアメリカが軍用に開発したもので、腹腔鏡手術などに活用。低侵襲であるため痛みや合併症のリスクを軽減できるほか、10倍に拡大した3D画像がディスプレイで映し出されることで広い視野が確保でき、術者の負担も軽くできるといったメリットがある。

さらに、今年度からロボット支援下内視鏡手術の保険適用範囲が大幅に拡大されたことも追い風となっている。昨年度までは腎がん(70,730点)および前立腺がん(95,280点)のみが適用を受けていたが、今年度からは胃がんや肺がん、直腸がん、子宮がんなど12の術式にも適用。保険点数も稼げることから、大病院を中心に今後も導入が進んでいくと思われる。

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