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医療経営情報(2019年3月7日号)

2019/3/27

◆アフターピル、オンライン診療のみでの処方を検討         AGA、ED、花粉症、性感染症は認めない方向

――厚生労働省
オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」は、2月8日の会合で、対面診療なしでオンライン診療を受けられる症状について議論を展開。アフターピル処方については、産婦人科医などの専門家の意見を広く聞くなど、認める方向で検討を進める方針を示した。検討の俎上に載せられていた男性型脱毛症(AGA)、勃起不全症(ED)、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症など)、性感染症については、オンライン診療のみの受診を認めない方向で一致した。

オンライン診療は、従来「遠隔診療」と呼称され、離島やへき地の患者などに限り認められていた。とはいえ、対象となる診療報酬項目がなかったため、積極的に実施されていたとは言い難い状況にあった。しかし、スマートフォンやタブレット端末が普及し、Skypeといったビデオ通話アプリが手軽に使用できるようになった今、効率的な医療を推進する狙いもあり、昨年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(オンライン診療ガイドライン)を策定したうえで昨年4月の診療報酬改定で「オンライン診療料」を創設。広く解禁された次第だ。

医療の基本が対面診療であることから、オンライン診療も「初診は対面診療」と定められている。しかし、たとえば禁煙治療のように、対面で診察しなくても診断や治療方針の決定が可能なものもあるため、オンライン診療ガイドラインでは「リスクが極めて低い場合」のみ例外的に初診からのオンライン診療を可能としている。

この「リスクが極めて低い場合」が拡大解釈され、不適切なオンライン診療が横行しているのが、「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」の立ち上げ理由となっている。契機となったのは、昨年10月の新聞報道。新聞でも「『ED薬処方、来院の必要一切なし』とする医療機関が多数ある」「医師どころか医療関係の資格すら持たない『相談員』と名乗る人物がスマホ画面に出た」「糖尿病治療薬をダイエット薬として処方された」と次々に報じられたため、どの症状なら「初診からのオンライン診療」が可能なのか、改めて確認しようというわけだ。ガイドラインには「禁煙外来など定期的な健康診断等が行われる等により疾病を見落とすリスクが排除されている場合」と記されているため、男性型脱毛症(AGA)、勃起不全症(ED)、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症など)、性感染症、緊急避妊薬(アフターピル)の5つを俎上に載せた。

AGA、ED、花粉症、性感染症については、初診の対面診療が必要という点で構成員の意見が一致。アフターピルについては、性的被害が大きな心の傷になり受診のハードルが高くなること、婦人科のかかりつけ医がいる女性ばかりでないこと、夜間の相談が多い傾向のある事案であることなどから、「初診からのオンライン診療」を認めるべきという意見が出た。一方、転売などのリスクを指摘する意見や、アフターピル処方を専門とする医療機関が出現することを危惧する意見も出ており、厚労省側はより広く専門家の意見を聞いたうえで改めて議論を進めたい意向を示している。

アフターピルは欧米を中心に市販されている国が多く、無料配布されている国もある。日本では現在保険適用外であり、価格は1万5,000円から2万円程度。2017年に厚労省の検討会で市販薬化が検討されたものの、悪用・乱用の恐れがあるとの理由から見送られた。今回の議論は、初診からのオンライン診療のみならず、市販薬化の再検討につながる可能性もあるため、今後の展開に注目が集まる。

◆中医協、厚労相あてに「消費税改定」の内容を答申
増税による各医療機関の影響に「過不足なく補填」と会長

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会
厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2月13日、今年10月に実施される診療報酬改定について、根本匠厚生労働相あてに答申。中医協の田辺国昭会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「各医療機関に過不足なく補填するとの課題に的確に対応しうるものになった」とコメント。代理で答申書を受け取った大口善徳厚生労働副大臣は「改定後の補填状況の検証は速やかに、かつ継続的に行う」と挨拶している。

通常、診療報酬改定は2年に1回実施されており、今回は臨時的な改定となる。改定を行う理由は、10月に消費税の税率が現行の8%から10%へと引き上げられるからだ。診療報酬は非課税であるため、医療機関や調剤薬局は仕入税額控除を受けることができないが、実際の仕入れでは消費税を負担している。そのため、負担相当額を補填する措置として、これまでも税率が引き上げられるたびに臨時改定が行われてきた。

しかし、昨年7月に開催された「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で、2014年に実施された消費税率引き上げ(5%から8%)に対する補填状況について、厚労省が2015年11月に公表していたデータでは病院全体の補填率が102.36%だったものの、実際は82.9%だったことが明らかになった。厚労省の調査方法のみならず、臨時改定の設計自体に問題があることが浮き彫りとなったため、今回は「5%から10%」に対応した点数引き上げを実施。さらに、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)などを活用して基礎データや医療機関などの分類を精緻化するなどの対応を実施した。

個別の主な配点としては、初診料が現行から6点引き上げられて288点、再診料が1点引き上げられて73点、外来診療料は1点引き上げられて74点、急性期一般入院料1は59点引き上げられて1,650点、昨年の改定で新設されたオンライン診療料は1点引き上げで71点。診療報酬全体ではプラス0.41%、薬価はマイナス0.51%、材料価格はプラス0.03%となっている。

◆DPC制度導入により「医療の質」が維持との結果    平均在院日数は下がり、病床利用率は向上 退院患者調査

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会
 厚生労働省は、2月13日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で、2017年度に実施されたDPC制度導入の影響を評価する「退院患者調査」の結果を報告。「医療の質」を図る目安となる「再入院率」「再転棟率」は前年度とほぼ変わらないことがわかった。「平均在院日数」は前年度より下がり、「病床利用率」は向上していることも明らかとなっている。

DPC制度(DPC/PDPS、診断群分類別包括支払い制度)は、医療をより効率的に提供する仕組みとして2003年に導入された。一方で、いわゆる「粗診・粗療」を助長する可能性もあるため、厚労省はDPC対象病院に対して毎年詳細な診療データの提出を求めている。それを集計・分析したのが「退院患者調査」だ。患者に対して適切な医療が提供できていれば「再入院」「再転棟」が起こらないとの考えから、「再入院率」「再転棟率」は「医療の質」を図る目安となっている。

調査結果を見ていくと、「再入院率」はDPC対象病院I群、II群、III群ともほぼ横ばい。計画的な再入院はI群が2016年度の10.0%に対して10.3%、II群が8.4%に対し8.5%とわずかに増えているが計画外の再入院はいずれも2016年度と同じ数値を示している。「再転棟率」はI群、II群、III群とも2016年度と変わらない。

平均在院日数は、I群、II群、III群とも2016年度よりも低く抑えられている。I群は2016年度が13.11日だったのが12.79日に、II群は11.80日だったのが11.64日に、III群は12.24日だったのが12.02日となった。病床利用率はいずれも向上しており、I群が2016年度の82.2%から0.7ポイント上昇して82.9%に、II群は85.5%から0.2ポイント上昇して85.7%に、III群は0.9ポイント上昇して81.9%となっている。

これらの結果から、少なくともDPC対象病院に関しては、医療行政が目指す方向性へと数値上はコントロールできていることがわかる。裏を返せば、DPC対象病院は現状の「再入院率」「再転棟率」をキープしながら「平均在院日数」を下げ、「病床利用率」を上げ続けることが可能であると数字で裏付けられた調査結果となったわけで、DPC準備病院など今後DPC導入を目指す医療機関は、よりシビアにこれらの数値をコントロールする必要性に迫られるといえよう。

◆訪日外国人旅行者の診療価格、大半は診療報酬点数表を活用 受け入れの多い医療機関の59%は1点10円、28%は1点20円以上で請求

――厚生労働省
訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会
 厚生労働省は、2月8日に開かれた「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」で、最新の訪日外国人旅行者に対する診療価格の実態調査の結果を公表。ほとんどの医療機関が診療報酬点数表を活用して診療価格を設定していることがわかった。外国人患者受け入れが多い医療機関の59%は1点10円、28%の医療機関が1点20円以上で請求していることも明らかとなっている。

訪日外国人旅行者に対する診療は、保険が適用されない。自由診療であるため、各医療機関が任意に診療価格を設定できる。しかし、どのように診療価格を設定するべきかわからない医療機関が多いのが実情であり、わかりやすい目安として診療報酬点数表を当てはめているものと思われる。実際、有効回答数3,825のうち、90%に相当する3,430の医療機関は1点10円(または消費税込みで10.8円か11円)で請求しており、外国人患者だからといって特別な価格設定をする必要性を感じない医療機関が大半であることが窺える。

ただ、場所によっては訪日外国人旅行者が多くなるため、医療通訳の用意や他の患者への配慮を含めた特別な対応が必要になるのは容易に想像できる。受け入れ数の多い医療機関(調査に回答したのは147の医療機関)になると、1点10円に設定しているのが6割弱に減り、3割近い医療機関が1点20円以上に価格を設定しているのはそのためだろう。

また、受け入れの多い147の医療機関のうち、11%に該当する16の医療機関は通訳料も請求している。その一例として厚労省が挙げたのは以下のとおりだ。

•通訳ボランティアの交通費相当額を患者に請求
•2時間まで1,080円 以後1時間ごとに324円が加算
•1日利用あたり10,000円請求(日本の健康保険を所持している外国人には適用せず)
•アテンド通訳(4時間以内)25,920円 以降1時間ごと6,480円
•外部医療通訳利用:15,000円/時間 外部テレビ電話通訳利用:300円/分

そのほか、診断書作成料や時間外料、差額ベッド代などを追加請求している医療機関や、診断書を外国語で作成する際に割増手数料を請求する医療機関もあったという。

観光立国を掲げていることもあり、年々増加している訪日外国人旅行者。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催でさらに増えることが見込まれており、とりわけ首都圏の医療機関は外国人患者向けの料金表作成が急務だ。数が限られている医療通訳の確保を含めた工数を試算して適切な料金を打ち出すうえで、今回公表された資料はおおいに参考となるのではないだろうか。

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