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クリニックニュース 2013年11月5日号

2013/11/5

非営利ホールディング型医療法人創設、議論の俎上に

《政府、産業競争力会議 医療・介護等分科会》

政府は10月29日、産業競争力会議の医療・介護等分科会を開催した。この分科会の主査である増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授、野村総合研究所顧問)は、当日、今後の具体的な検討項目として、1.効率的で質の高いサービス提供体制の確立、2.公的保険外のサービス産業の活性化、3.保険給付対象範囲の整理・検討、4.医療介護のICT化 ―等を提案した。中でも、効果的で質の高いサービス提供体制の確立における具体策として、▼非営利ホールディングカンパニー型医療法人制度の検討、▼医療法人の合併規制等の見直し、▼医療法人の附帯業務の拡充、▼自治体病院等の公設・公的病院の医療品質情報の更なる開示、▼社会医療法人の認可要件の緩和、▼社会福祉法人の透明化、▼病床機能分化の推進、▼介護サービスの品質改善 ―を挙げた。

この産業競争力会議は、日本経済再生本部の下に我が国産業の競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具現化と推進について調査審議するために設置されたものであり、「日本再興戦略」では、健康長寿産業が戦略的分野の一つに位置付けられている。中でも、医療・介護分野を「制度の設計次第で巨大な新市場として成長の原動力になり得る分野」として捉え、「どう成長市場に変え、質の高いサービスを提供するか、制度の持続可能性をいかに確保するかなど、中長期的な成長を実現するための議題が残されている」としている。このような前提の下、増田主査は、非営利ホールティングカンパニー型医療法人制度について、医療法人間及び医療介護サービス提供主体間の連携や再編を円滑に進めるための制度改正として、また、社会保障制度改革国民会議報告書で言及されている事項として、その創設の検討を提案した。

非営利ホールディングカンパニーの核となる医療法人の形態は、社団、財団、基金型といったものが考えられるが、現状、医療法人の大多数である社団医療法人が「非営利ホールディングカンパニーの核を担う」と想定し、その上で検討が必要な論点(社員等の要件、社員総会等の意思決定の在り方、出資規制等の見直し、剰余金の分配)を提示した。特に、出資規制等の見直しにおいては、現行では、持分ありの医療法人は経過措置としては認められているのみで新設はできないが、従来、各々独立して経営してきた医療法人等が非営利ホールディングカンパニー型医療法人へ参画することを促進するため、非営利ホールディングカンパニー型医療法人を創設する場合には、持分あり医療法人を認めることを提唱している。

「医療法人の合併規制等の見直し」については、▼病床機能分化を推進するためのツールとして、医療機関の再編に際し、会社法の会社分割と同様のスキームを認める、▼現在、不可能である社団医療法人と財団医療法人の合併の認可 ―を挙げ、「医療法人の附帯業務について」は、医療、介護のシームレスなケアを提供するために、医療法人が所有する病院・診療所等の遊休スペースや施設に隣接する不動産を病院・診療所・介護施設・高齢者向け住宅の用途に使用することを目的とした賃貸事業を附帯業務としてはどうかとしている。

今後の具体的な検討項目は、上述の1から順に11月上旬から議論を進め、12月上旬に論点を整理した上で、年末に中間整理を行う予定である。

次期診療報酬改定、プラスにする必要なしとの意見多数

《財務省・財政制度等審議会 財政制度分科会》

財務省は10月21日の財政制度審議会 財政制度分科会(分科会長:吉川洋氏〔東京大学大学院経済学研究科教授〕)に診療報酬改定に向けた考え方を示した。この日、17名の委員が参加し、社会保障予算の検討がなされる中で、財務省は、医療の自然増は主に①人口の高齢化、②医療の高度化等 ―から構成されており、医療の高度化等については新しい医療技術や新薬の開発・普及といった医療の内容面での変化分(医療の質の改善・向上分)も含まれていると指摘。こうした質的改善・向上を含んだ自然増が毎年1兆円を超えており、自然増を含む医療等の経費について合理化・効率化に取り組むこととされている中、「自然増に加えて、更に診療報酬改定により、それを上積みする状況にあるのか」「自然増を通じて、賃金・物価よりも高い水準で医療費が増加しているにもかかわらず、更に診療報酬本体単独でも、賃金・物価よりも高い水準での伸びとなっている」などと問題提起した。これを受け、各委員からは、次期診療報酬改定において診療報酬本体をプラスに改定する必要はないのではないかとの意見が多数挙がり、最大でもプラスマイナスゼロ、最低で診療報酬本体もゼロ改定、診療報酬全体で薬価引き上げ分をそのまま反映させてマイナス改定という姿勢を示した。

診療報酬改定については、現在、中央社会保険医療協議会にて議論が重ねられており、まもなく報告予定である医療経済実態調査結果を踏まえて、次期改定のあり方についての考え方をまとめることになる。改定率については、12月に財務・厚生労働の両大臣が折衝し、決定の運びとなる。

機能強化型と同等の緊急往診と看取りの在支診、実績評価

《厚生労働省・平成26年度診療報酬改定情報》

中央社会保険医療協議会(以下、中医協)は、10月23日、総会を開催し在宅医療(その4)を議題とした。機能強化型の在宅療養支援診療所(以下、在支診)・病院の要件等について議論がなされた。平成24年度診療報酬改定で、医療機関間連携等による在宅医療の機能強化と看取りの充実を目的に、機能強化型在支診・病院が新設され、それまでの往診料緊急加算や在宅時医学総合管理料の評価引上げとターミナルケア加算や看取り加算の新設がなされた結果、平成24年に届出のあった機能強化型在支診(単独)は221件、同在支診(連携)は2,604件、従来型在支診は10,933件である。

中医協の診療報酬改定結果検証部会において実施された調査の結果、機能強化型在支診・病院の施設基準の1つである「過去1年の緊急往診実績5件以上」については、機能強化型在支診・病院の導入直後の半年(平成24年4月~9月)で、その要件を満たしているのが機能強化型在支診(単独)で50.0%、同在支診(連携)で、47.7%と半数を割り込んでいる。中でも、緊急往診実績が0件と回答した機能強化型在支診(単独)37.5%、同在支診(連携)で23.9%あった。それに対し、一般の在支診で、緊急往診5回以上の実績があるところが31.2%あった。また、同じく施設基準の1つである「過去1年の在宅看取り2件以上」については、実績が0件と回答した機能強化型在支診(連携)が13.7%である一方、一般の在支診で2件以上の実績があるところが27.1%であった。

これらの結果を受け、在宅医療の機能強化・充実を図りたい厚労省は、機能強化型の施設基準を満たさない一般の在支診・病において、緊急の往診と在宅看取りが機能強化型に求めているのと同程度の実績がある場合には同水準の評価することを提案した。

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