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医療経営情報(2019年11月7日号)

2019/11/22

◆財政審、医療費の自己負担増と診療報酬のマイナス改定を提言        本体改定率の伸びが「賃金・物価の伸び」よりも大きいことを根拠に

――財務省
財政制度等審議会 財政制度分科会

財務省は、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の財政制度分科会で、医療費の自己負担増と診療報酬のマイナス改定を提言した。診療報酬については、医療費の単価の伸びの一部である診療報酬本体改定率が、一般的な人件費や物件費の伸びを示す「賃金・物価の伸び」よりも大きいことを指摘。さらに、「患者数等の人口要因の伸び」なども考慮すると、医療機関の収入の伸びは一般を大きく上回る水準とし、マイナス改定が不可欠であると主張している。

また、国民医療費の伸びにも言及。過去10年間で国民医療費が年間で平均2.4%のペースで増加しており、そのうち高齢化要因による増加は1.1%程度とした。つまり、増加の半分程度は人口増減や高齢化の影響とは無関係であるため、診療報酬は「2年間で2%半ば以上のマイナス改定」とする必要があるとした。

財務省は数字でもこの主張を提示。それによれば、2019年予算ベースで、国民医療費(これをイコール診療報酬総額としている)は約46兆円。このうち税金が約18兆円、保険料負担が約23兆円、患者負担等が約6兆円であり、国民負担は年間で約1.1兆円増加しているとした。この現状に対し、診療報酬を1%引き下げれば約4,600億円の医療費が抑制されるため、税金・保険料・患者負担を軽減できるとした。

しかし一方で、自己負担額の増加も提言。現在、高齢者の医療費の自己負担割合は70~74歳が2割、75歳以上が1割となっているが、75歳以上も2割負担とするよう主張。さらに、「広く負担を分かち合うべき」として外来受診に対する「少額の定額負担」の導入や、「薬剤費の一定額までの全額自己負担」などを行い、医療保険給付の伸びを抑制。現役世代の保険料負担を軽減したいとしている。

財務省は、前回の2018年度通常改定前にも「2%台半ば以上」のマイナス改定を提言。厚生労働省との激しい応酬の結果、診療報酬本体は0.55%のプラス改定となったものの、薬価をマイナス1.65%、材料価格をマイナス0.09%にして帳尻を合わせた経緯がある。今回の財務省提言は、平たくまとめると医療機関の収入を抑制するとともに、高齢者からタンス預金を放出させることが狙いともいえるため、日本医師会の激しい反発が起こることは必至だ。実際、日本医師会は同日緊急会見を開き、横倉会長は「診療報酬本体の引き下げは給与引き下げと同じ。とんでもない話だ」と明言。今後、前回通常改定並みに激しい応酬が繰り広げられることが予想される。

◆ 算定の進まない「療養・就労両立支援指導料」の要件見直しへ
対象疾患をがんのほか「脳卒中」「肝疾患」「難病」にも拡大

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会 総会
厚生労働省は、10月25日の中央社会保険医療協議会総会で、2018年度診療報酬改定で新設された「療養・就労両立支援指導料」の要件を見直す方針を明らかにした。現在、対象疾患はがんのみだが、「脳卒中」「肝疾患」「難病」にも拡大するとともに、産業医が選任されていない事業所においても適用できるようにする。

日本の労働人口のうち、約3人に1人がなんらかの疾病を抱えながら働いている。しかし、治療を続けながら働くための制度が整っていないほか、社内の理解が不十分であることから離職してしまう人も多い。そうした現状を打開するため、厚生労働省は2016年2月に「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(今年3月改訂)を策定。医療を提供する側からの支援を手厚くするため、2018年度診療報酬改定で「療養・就労両立支援指導料(1,000点)」および「相談体制充実加算(500点)」を新設した。

しかし、対象患者が「産業医が選任されている事業場に勤務しているがん患者」に限定されているほか、診療情報を提供した後、産業医からの助言を踏まえて治療計画の見直し・再検討を行うまで算定できないため、算定回数は伸びていない。2018年度改定の3カ月間ではあるが、「療養・就労両立支援指導料」は10回、「相談体制充実加算」はたった5回だった。

そこで厚労省は、「企業に対し診療情報を提供」した場合を評価するほか、産業医が選任されていない事業場も対象となるような要件緩和案を提示。さらに、がん以外の脳卒中や肝疾患についても、前出の両立支援ガイドラインに企業・医療機関連携マニュアルが示されているほか、難病についても本年度中に連携マニュアルが作成される予定となっていることから、脳卒中、肝疾患、難病も対象疾病とする方針を掲げている。

なお、治療と仕事の両立に関しては、厚労省が産業保健活動総合支援事業の一環として「治療と仕事の両立支援助成金(制度活用コース)」も実施。1企業または1個人事業主あたり一律20万円を助成している。

◆ 厚労省、「救急医療管理加算」の要件厳格化を提案 診療側委員からは「たらい回し防止」効果を踏まえた慎重論も

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会 総会
 厚生労働省は、10月25日の中央社会保険医療協議会総会で、「救急医療管理加算」の要件厳格化を提案。重症度が必ずしも高くない症例が一定程度あったことを受けてのもので、とりわけ対象患者の要件を見直すべきだとした。診療側委員からは、「救急医療管理加算」を設けたことで「たらい回し防止」の効果が出ているとして、一概に厳格化することに対して慎重な見方も示されており、どの程度厳格化するかが今後の焦点となりそうだ。

 「救急医療管理加算」は、救急医療の中でも重篤な患者を受け入れた際に、通常よりも要する治療や検査が多くなることを配慮して設定されている。現在、意識障害や呼吸不全の患者を対象とした「救急医療管理加算1」(900点)と、加算1に「準ずる重篤な患者」を対象とする「救急医療管理加算2」(300点)がある。

 問題は、これらの要件定義が曖昧な点にある。まず、「救急医療管理加算2」は明確な状態を要件化していないこともあり、算定数が増加傾向にある。さらに、「救急医療管理加算1」の算定患者を分析したところ、指標上の重症度が必ずしも高くない症例も一定程度あったことがわかっている。診療側委員からは「脳卒中で緊急搬送された患者の場合、入院時に意識があってもいつ急変するかわからないため、集中的な管理を要するケースもある」との声があがったが、そもそも「救急医療管理加算」は入院時に重篤な患者が対象。つまり、この診療側委員のコメントは、要件に適していない患者も算定対象としている現状を示している。

 その意味で、厚労省が要件厳格化を提案するのは筋が通っているといえる。一方で、救急医療管理加算があることで救急搬送患者の「たらい回しが防止できている面もある」と診療側委員がコメントしているのも見逃せない。現場の状況を踏まえれば、現状の加算1、加算2の要件を厳格化したうえで、より点数を低く設定した「救急医療管理加算3」を新設する必要や、そもそもの救急医療のあり方を見直す必要が生じる可能性もあるのではないか。

◆ 経済財政諮問会議、13万床の病床削減を提言 医療費抑制のため今後3年程度で集中的に再編を

――経済財政諮問会議
 10月28日に開かれた経済財政諮問会議は、社会保障制度改革をテーマに議論を展開。民間議員から、「無駄なベッドの削減は増加する医療費の抑制のために大変重要」として、官民合わせて13万床の病床削減を急ぐべきとの提言があった。期限については、「期限を区切って必ずやり遂げていかなくてはならない」として、今後3年程度を集中再編期間と位置づけるべきとし、そこに「大胆な財政支援をするべき」としている。

 この提言は、「地域医療構想」の実現に向けた具体策。「地域医療構想」は、2014年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」で制度化されたもの。もっとも人口ボリュームが大きな層である「団塊の世代」が全員75歳以上となる2025年を見据え、病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取組みだ。しかし、民間議員は「進捗は十分ではない」とし、13万床の病床削減のほか「急性期から回復期への病床転換」、「介護医療院を含む介護施設、在宅医療への転換」を重点的に推進すべきとした。諮問会議の議長を務める安倍晋三首相も、会議の最後に「地域の住民の方々の医療・介護サービスへのニーズを的確に反映し、持続可能で安心できる地域医療・介護体制を構築していくためには、地域医療構想を実現していくことが不可欠だ」と述べている。

 「官民合わせて」としているものの、ターゲットとしているのは民間病院だ。提言の中でも「病床の7割超が民間病床」であることが、地域医療構想の進捗が不十分であることの一因としており、厚生労働省に対し、今年度中に民間病院の再編に資する分析を行うよう求めた。この提言を受け、臨時議員として出席していた加藤勝信厚生労働相は「それぞれの現場から民間医療機関のデータを追加的に公表してほしい」と発言。9月に厚生労働省では、再編・統合の議論が必要と判断した424の公立病院・公的病院の具体名を公表しているが、民間病院にも同様の措置がとられる可能性もありそうだ。

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