ホーム > FAXレポート > 医院レポート > クリニックニュース 2014年10月20日号
向精神薬多剤投与該当分があれば他剤も減算
《平成26年度診療報酬改定情報・疑義解釈その10》
厚生労働省は10月10日、平成26年度診療報酬改定における疑義解釈資料のその10を公表した。今回は、医科の項目についてのみ解釈が示された。中でも、向精神薬多剤投与について3題取り上げ、▼向精神病薬を別の目的で投薬した場合の扱いについて、▼向精神病薬多剤投与に該当する投薬を行った場合の、同一処方した他剤の減算について、▼抗うつ薬又は抗精神病薬の臨時処方や精神科の診療に係る経験を十分に有する医師がやむを得ず投与を行った場合の減算について ――の解釈が明記された。
向精神病薬を別の目的で投薬した場合の扱いについて、抗精神病薬に分類されているレセルピンを降圧剤として投薬した場合等の向精神薬を別の目的で投薬した場合も向精神薬多剤投与に係る種類数に含まれると説明。別の効果を期待して投薬した場合であっても、別紙36の分類に基づき向精神薬として種類数にカウントされる。なお、種類数に含まれるのは別紙36に示した成分の医薬品を内服・頓服・外用として投薬した場合のみ含まれ、注射薬は含まれないと説明した。また、1回の処方において、3種類以上の抗不安薬又は3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投薬を行った場合には、他の処方薬も含めてすべての薬剤料を100分の80で算定しなければならないことも説明された。抗うつ薬又は抗精神病薬の臨時処方や精神科の診療に係る経験を十分に有する医師が、やむを得ず投与を行った場合は、向精神薬多剤投与に係る種類数のカウントには含めないが、同時に抗不安薬又は睡眠薬を3種類以上処方した場合にも、抗うつ薬又は抗精神病薬を含む全ての薬剤料が100分の80に減算となる。
疑義解釈資料その10では、その他、コンタクトレンズ検査料を算定した患者が、「医師法」及び「保険医療機関及び保険医療養担当規則」の規定に基づく診療録の保存期間である5年を超える間隔を置いて当該保険医療機関に来院した場合に、当該保険医療機関において過去の受診が確認できない場合は初診料を算定できる等の解釈が示された。
規制改革事項に医療法人の理事長要件の見直し、追加
《首相官邸・国家戦略特区諮問会議》
首相官邸において、安倍首相が10月10日に開催した国家戦略特区諮問会議で、国家戦略特区諮問会議における追加の規制改革事項等が取りまとめられた。追加された規制改革事項の中には「持続可能な社会保障制度の構築」が挙げられ、「我が国経済社会の持続的発展に必要不可欠な社会保障制度の実現のため、医療、雇用、保育等に関する規制改革事項について、今臨時国会に提出する特区法改正案の中に、特例措置等の必要な規定を盛り込む」と説明。具体的には、医療法人の理事長要件の見直しとして、「理事長が医師であるか否かに関わらず、医療法人のガバナンスを強化するとの観点から、都道府県知事が医師以外の者を理事長として選出する際の基準について、特区においては、法令上明記した上で見直し、当該基準を満たす場合は認可することとする」と提案した。
産業の国際競争力の強化等を目的とした総合特区等の従来の特区制度は、地域の発意に基づく制度であり、より一層スピード感を持って強力に、世界の企業が日本に投資したくなるようなビジネス環境を作るために、国の成長戦略に基づき、内閣総理大臣主導で民間の力を活用しながら、集中的な取組を行うもの。そのうえで、「国家戦略特区」は国家戦略の観点から、大胆な規制改革等を実行するための強力な体制を構築して取り組むために創設された。規制改革の実験場として突破口を開くことを目的としている。
27年度介護報酬改定、報酬の基本部分6%引き下げ求める
《財務省》
財務省は10月8日、財政制度等審議会・財政制度分科会を開催し、平成27年度予算編成に向けた社会保障予算に関する論点を示した。その中で、医療については▼医療保険制度改革(医療提供体制の改革、保険給付範囲の見直し、負担の公平確保)、▼診療報酬・薬価 ――に分けて論点が整理された。
中でも、医療提供体制の改革について、①地域医療構想、②医療費適正化計画、③国保の運営主体の都道府県移行、④財政措置の拡充等 ――を挙げ、その確実な実施のためには、地域医療構想や医療費適正化計画が実効性のある形で策定されるとともに、都道府県がその役割を適切に発揮することが重要と明記。都道府県が策定する医療費適正化計画において、医療費の水準に関する目標や平均在院日数、後発医薬品の使用促進等に関する目標等を明確に位置づける必要があるのではないかと指摘した。さらに、医療費適正化計画を速やかに改定し、地域医療構想を平成27・28年度中に策定した後、平成28年度(遅くとも平成29年度)には各都道府県が医療費適正化計画を新制度の下で見直すことが必要とした。また、国保の財政運営の責任について、適切に都道府県に移行すべきではないかと提案した。
診療報酬については、消費税率10%への引上げに関し、「27年に薬価調査を行い、10月までに市場実勢価格を踏まえた薬価基準に改定した上で、消費税引上げへの対応を適切に措置する必要があると示した。
平成27年度介護報酬改定については、介護報酬本体の外枠で、消費税財源を活用して、低所得者の保険料軽減(1,300億円程度)や地域包括ケアシステムの構築に向けた認知症対策の推進をはじめとした医療介護連携の推進や新たな基金による施設整備の推進等を行うこととしているが、こうした充実を行う一方で、介護職員に対する処遇の確実な改善(処遇改善加算の拡充)や在宅サービスの充実等を行いつつ、良好な収支差等を反映した介護報酬の基本部分の適正化(適正化に係る部分については少なくともマイナス6%程度)を行うことにより、介護報酬全体としてはマイナス改定を行い、国民負担の軽減に努めるべきと提示した。
次期介護保険制度改革については、今後、認知症高齢者や高齢の単身世帯等が増加していくことを踏まえ、地域包括ケアシステムの構築を着実に進めることが重要とした上で、消費税財源を活用し、地域支援事業の充実による在宅医療・介護連携の推進や認知症施策の推進、24時間対応の定期巡回サービス等の在宅介護サービスの質的・量的拡充や介護職員の処遇改善・人材確保など、各種の施策を一体的に展開していくことが不可欠と指摘。今後の介護保険制度の課題として、▼軽度の要介護者に対する生活援助や訪問介護・通所介護以外の予防給付について、地域支援事業への移行や給付範囲の見直しを検討、▼在宅サービスについては、事業者の自由な参入を引き続き認めていくのであれば、サービスの質を確保しつつ、価格競争が行われる仕組みを構築するべきではないか ――等を挙げた。