ホーム > 新着情報 > 月刊歯科医院経営ワンポイントアドバイス 2014年11月号
理念経営で自費収入比率70%を目指す
歯科医院を取り巻く環境が一層厳しさを増している中、開院以来、自費収入比率50%以上を維持している自費診療を中心とした歯科医院があります。今回は、こちらの歯科医院(以下、A歯科医院、A院長と表記します。)を1つ成功事例としてご紹介したいと思います。もちろん、地域差等ありますが、信ずる理念を貫いた歯科医院の成功事例の1つとしてご理解いただければと思います。
A歯科医院は、関東の地方都市にて、開業当初より、競合他院が半径300m以内に2件、500m以内に1件ある激戦区に立地しています。そのようなな環境で、開業以来10年以上収入金額で8千万以上、自費収入比率を50%~60%維持してきました。激戦区のなか、どのようにして、他院との差別化を図り、自費収入を伸ばしてきたのか、あらためてA院長に伺ってみると、返ってきた答えは、「患者さんに丁寧に説明をして、患者さんの納得のいく治療を提供したら、結果的に自費診療になっていた。」ということでした。
■理念を貫く診療スタイル
「結果的に自費診療になる」とはどういうことを意味しているのか、A歯科医院の独特の診療スタイルについて、いくつか挙げてみたいと思います。
1つは「患者1人あたり45分診療」です。通常、歯科医院では、患者1人あたりの診療時間を15分から20分ぐらいかけて、1時間に平均3人ほど診療しているケースが多いのではないでしょうか。もっと短い時間で1時間に平均4人以上診療しているところもあると思います。しかし、A歯科医院では、患者1人あたりの診療時間を最低45分かけて診ています。保険診療の患者さんも含め、すべての診療を45分以上かけています。自費診療の患者さんでは1時間から2時間になることもあります。「保険の患者さんは赤字だよ。」と院長は笑って話しますが、A歯科医院の経営理念である「丁寧な説明」「納得のいく治療」をまさに実践されています。本当にできるのかと思われる方もいらっしゃると思いますが、この診療スタイルは、開業以来まったくブレずに貫かれています。院長曰く、「口の中には話すネタがいっぱい詰まっているから、話は尽きない」とのことですが、患者さんが納得して満足のいく治療を自ら選択してもらうためには、この診療時間の長さこそが、納得のいく自費診療への大きな鍵になっています。
2つめは、「院長が情報発信源」です。自費診療の説明等の情報発信は院長ひとりで行っていて、そして個室ユニットの中だけで行われています。自費診療を積極的に行っている歯科医院では、受付・待合室に自費診療のパンフレットや価格表など置いたり、院内掲示板に自費診療の案内を表示するほか、別室にカウセリング室を設けて、スタッフによる自費診療の説明や提案等が行われているなど、患者さんへ自費診療を紹介する体系的な仕組みが施されていると思います。しかし、A歯科医院では、院長に会うまで、自費について一切アナウンスがありません。院内待合室はかなりシンプルであり、院内掲示板などもなく、絵画と花が飾られているだけです。スタッフは自費診療について一切触れることはなく、患者さんにとっては、院長に診てもらうまで自費診療についての情報がないため不安が生じる方もいらっしゃると思いますが、院長の丁寧な説明により、やがて解消されていくようになります。このようなA歯科医院の診療スタイルに対して、院長に理由を伺ってみると、「自費診療については専門的な高い技術や知識が必要であり、リスクに対する責任も重く、患者さんへ提供する情報1つにしてもその質を担保するために、自分のみが情報の発信源になっている」とのことでした。
個室ユニット内での説明方法としては、患者さんの口の中を動画で撮り、それをモニターで一緒に見ながら、タッチペンでモニターに治療方法や自費の情報を書き込みながら説明していきます。自費診療の内容や料金についてもその場に書き込み、患者さんが納得いくまで何度でも説明をして、結果として患者さんが自費診療を選んでいます。
そのほかにも、スタッフの言葉づかいや電話応対の徹底した教育や待ち時間「0」を目指した混まない静かな待合室など、独自のスタイルで診療を行っています。
■自費収入比率70%を目指して
開業当初は、その徹底した診療スタイルゆえに、地域の患者さんからは敷居が高いと思われていましたが、今ではそれが、自費診療に対する信頼に変わり、多くの患者さんが受診されています。自院の掲げた経営理念を貫き通すことが、今では一番の強みになっています。
最後に、A院長に今後の目標について聞いてみました。院長曰く、「もっと多くの地域の患者さんを満足させるために自費収入比率を70%以上の歯科医院を目指したい、なぜなら、満足した結果が自費診療だから」 ――。
株式会社 藤井経営
細井 保正