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ウェルフェア・レポート 2015年2月25日号

2015/3/3

安倍首相ら主要閣僚が政府4演説      ~衆参両院の本会議

安倍晋三首相ら主要閣僚が2月12日、衆参両院の本会議で施政方針演説など政府4演説を行った。安倍首相は施政方針演説で「患者本位の医療改革」や「社会保障の充実」などを強調した。

■「社会福祉法人を改革」―― 施政方針演説で安倍首相
安倍首相は「患者本位の医療改革」について、「医療法人制度の改革も実施する。外部監査を導入するなど、経営の透明化を進める。さらに、異なる機能を持つ複数の医療法人の連携を促す新たな仕組みを創設し、地域医療の充実に努める」などと述べた。
「社会保障の充実」では、「介護職員に月額1万2,000円相当の処遇改善を行い、サービスの充実にも取り組む。他方、利用者の負担を軽減し、保険料の伸びを抑えるため、増え続ける介護費用全体を抑制する」と説明。社会福祉法人についても言及し、「経営組織の見直しや内部留保の明確化を進め、地域に貢献する福祉サービスの担い手へと改革していく」と述べた。

■「介護報酬、全体として引き下げ」―― 財政演説で麻生財務相
麻生太郎財務相は財政演説で、平成27年度予算の社会保障関係費について「医療・介護サービスの提供体制改革を推進する。介護サービス料金改定に際しては、介護職員の処遇改善や良質なサービスに対する加算を行いつつ、全体としては引き下げることで介護保険料の上昇を抑制し、利用者の負担を軽減する」などと述べた。

■「医療・介護情報を『見える化』」―― 経済演説で甘利担当相
甘利明経済財政政策担当相は経済演説で、「医療・介護情報の『見える化』を進め、各地域の状況を比較した結果も踏まえて支出の効率化・適正化を図るとともに、有識者からなる社会保障制度改革推進会議において、2025年を展望した中長期的な改革の検討を進めていく」などと述べた。

今改定「安定経営に必要な収支差が残るようにし適正化」
~政府4演説への代表質問で安倍首相

安倍晋三首相は、政府4演説に対する各党の代表質問を行った2月16~17日の衆議院本会議で、介護報酬改定に関し、「全体として事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るようにしつつ適正化を図る」との考えを示した。

■ 高齢者の負担分かち合い「国民会議提言を踏まえ、取り組み」
16日には、岡田克也議員(民主党代表)が「働く世代の負担能力にも限界がある中、比較的余裕がある高齢者による高齢者間の負担の分かち合いが必要であり、そのことについて率直に説明し、理解を得るための努力が求められると考える」と指摘し、「比較的余裕があるとはいえ、従来、一律に保護すべき弱者とされてきた高齢者の一部の方々に対する年金の削減や負担増について、総理はどう考えているか」と質問した。
安倍首相は「一昨年の社会保障制度改革国民会議では、全世代型の社会保障への転換を目指し、年齢別から負担能力別に負担の在り方を切り替え、高齢者にも負担能力に応じた貢献を求めることが必要であると提言されている。こうした議論を踏まえ、医療や介護など社会保障制度全体を通じ、低所得者に配慮を行う一方で、高齢者でも経済力がある方にはそれに見合った負担を求める取り組みを進めているところ」と答弁した。
高所得者の年金給付の在り方については、「国民会議において高齢世代内の再分配機能を強化する観点から、年金制度だけではなく税制や他の社会保障制度の負担などさまざまな方法を検討すべきと提言されており、それを踏まえて考えるべき問題と認識している」と述べた。

■ 介護職員の処遇改善「確実に実施されると考えている」
17日には、志位和夫議員(共産党委員長)が「政府は介護職員に対して処遇改善加算をするという。加算も含めた事業者への報酬全体を大幅に引き下げ、どうして待遇改善できるのか。“介護難民”を激増させる報酬削減は中止すべき」と質問した。
安倍首相は「今回の改定では、全体として事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るようにしつつ適正化を図るとともに、最重要の課題である介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で1人当たり月額1万2,000円相当の処遇改善を実現するための加算を設ける」と説明するとともに、「中重度の要介護者や認知症高齢者を受け入れた場合等にきめ細かく加算する。小規模な地域密着型サービスなどは高い報酬を設定するなど、質の高いサービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとなる」と答弁。さらに、「平成27年度からは都道府県に設置した基金に約700億円を充て、介護施設等の整備や介護人材の確保に向けた取り組みを一層推進することとしており、これらにより介護職員の処遇改善は確実に実施されると考えている。したがって“介護難民”を引き起こすようなものではないと考えている」と述べた。

国保の基盤強化、地域包括ケア、認知症対策などを推進
~衆院予算委で塩崎厚労相

塩崎恭久厚生労働相は2月19日の衆議院予算委員会で、消費増税の延期に伴う医療・介護の充実策に関し、国民健康保険(国保)の財政基盤の強化、地域包括ケアシステムや認知症対策などを推進していくことを挙げた。塩谷立委員(自民)が「消費税引き上げを延期する以上、給付と負担のバランスを考えれば、10%に引き上げた場合に想定した(社会保障の)充実策をすべて実施することは難しい」と指摘。そのうえで、「医療・介護の充実を図っていくのは、どのような中身であるのか」などと塩崎厚労相に答弁を求めた。塩崎厚労相はまず、「27年度予算案では、総理の決断で優先順位をしっかりとつけたうえで、4月からの子ども・子育て支援新制度の施行をすることにした」と説明。医療・介護の充実に関しては、「国民皆保険を堅持するために、国保の財政基盤の強化を、将来の都道府県単位の運営を展望しながら行う。そして、高齢者が住み慣れた地域で医療や介護を受けられる地域包括ケアシステムの構築に向けたさらなる取り組み、認知症対策についても推進していく。国保や介護保険などの低所得者の保険料負担についての軽減も行うことにしている」などと答えた。さらに、「急速に少子高齢化が進む中、社会保障費が増大していくが、国民の安心を支える社会保障制度を次の世代にしっかりと手渡していくために、社会保障・税一体改革の推進により、制度の充実と重点化・効率化を同時に進め、持続可能な社会保障制度にしていきたい」と述べた。

認知症高齢者等の生活環境「政府一丸となって整備」
~衆院予算委で安倍首相

安倍晋三首相は2月19日の衆議院予算委員会で、「国家戦略として認知症にどのように取り組んでいくのか」との佐藤茂樹委員(公明)の質問に対し、認知症の高齢者等が住み慣れた地域で暮らしていける環境を「政府一丸となって整えていきたい」と述べた。安倍首相は「世界で最も速いスピードで高齢化が進む我が国こそ社会全体で認知症に取り組み、世界のモデルとなる取り組みを進めていく必要があると思っている」と説明。「新たに策定した総合戦略(新オレンジプラン)では、消費税増収分を活用して、(認知症)初期集中支援チームを平成30年度までに全市町村に設置するなど医療・介護等が連携してできる限り早い段階から認知症の方を支援するとともに、根本治療薬については平成32年ごろまでの治験開始を目指すなど予防や治療のための研究開発を推進し、認知症サポーターを平成29年度までに800万人養成するなど、認知症の方や高齢者に優しい地域づくりを進めることとしている」と答えた。そのうえで、「今後とも、認知症の方ができる限り住み慣れた地域で暮らすことができるように、本人や家族の意見を十分に聴きながら、政府一丸となって環境を整えていきたいと考えている」と述べた。

「全国厚労関係部局長会議」を開催        ~厚労省

厚生労働省は2月23~24日、「平成26年度全国厚生労働関係部局長会議」を開いた。老健局の「重点事項」については、三浦公嗣老健局長が説明した。老健局の「重点事項」は、①介護保険制度改正、②介護報酬改定、③認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)――等の5項目。①の「地域医療介護総合確保基金」では、基金を活用した介護施設等の整備の対象事業として、▼地域密着型サービス施設等の整備への助成、▼介護施設の開設準備経費等への支援、▼特養多床室のプライバシー保護のための改修等による介護サービスの改善――を挙げ、三浦局長は「それぞれの自治体の中で実際に計画を立てていただいて進めていくことになると考えているので、改めてよく検討いただきたい」と要請した。また、基金を活用した介護従事者確保の内容として、▼参入促進、▼資質の向上、▼労働環境・処遇の改善――を挙げ、「これらをうまく使い、それぞれの地域における人材の確保に努めていただきたい」と述べた。②では、介護人材確保対策の推進について、「(介護職員)処遇改善加算などを更に充実した」と説明した。

報告書「社会福祉法人制度改革について」を公表  ~厚労省

厚生労働省は2月13日、社会保障審議会の福祉部会が12日の部会でまとめた報告書「社会福祉法人制度改革について」を公表した。報告書では、内部留保の明確化や福祉サービスへの計画的な再投下など改革の方向性を示し、「効率的・効果的に福祉サービスを供給していく観点から、適切な法人の在り方について、今後議論を深めていくことが重要である」と締めくくっている。

HD法人の創設へ、最終案を了承      ~厚労省の検討会

厚生労働省は2月9日に開いた「医療法人の事業展開等に関する検討会」で、いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人(HD法人)の創設等を盛り込んだ「地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設及び医療法人制度の見直し」の最終案を提示、大筋で了承された。同法人制度(仮称)の創設は、非営利新型法人の①法人格・名称、②事業地域範囲、③参加法人の範囲、④業務内容――等で構成。③では、▼事業地域範囲内における病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する複数の医療法人その他の非営利法人を参加法人とすることを必須とする、▼それに加え、非営利新型法人の定款の定めるところにより、地域包括ケアの推進のために、事業地域範囲内で介護事業その他地域包括ケアの推進に資する事業のみを行う非営利法人についても参加法人とすることができる、▼社会福祉法人の参加の在り方については、現行の社会福祉法人制度や現在検討中の制度改革の内容と整合性を図る――などとしている。

「2025年に向けた介護人材の確保」案を提示    ~厚労省

厚生労働省は2月23日に開いた社会保障審議会福祉部会の福祉人材確保専門委員会で、「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」と題した報告書(案)を提示した。介護人材確保の具体的な方策では、①参入促進、②労働環境・処遇の改善、③資質の向上――を挙げ、③では「介護福祉士資格取得方法の一元化」等を示している。

「産業競争力強化に関する実行計画」決定、介護関係も
~政府の日本経済再生本部

政府の日本経済再生本部は2月10日、「産業競争力の強化に関する実行計画(2015年版)」を決めた。「重点施策の内容、実施期限及び担当大臣」では、「外国人技能実習制度の抜本的な見直し」を挙げ、「介護の対象職種追加に向け、質の担保など、介護サービスの特性に基づく要請に対応できるよう具体的な制度設計を進め、技能実習制度の見直しの詳細が確定した段階で、介護サービスの特性に基づく要請に対応できることを確認の上、新たな技能実習制度の施行と同時に対象職種への追加を行う」としている(担当大臣は厚生労働大臣)。「医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設」も挙げ、▼非営利新型法人制度の創設については、速やかに結論を得て、平成27年中に制度上の措置を講じることを目指す。このため、必要な法的措置を速やかに講じる、▼当該新制度を活用した他病院との一体的経営実現のために大学附属病院を大学から別法人化できるよう、必要な制度設計について、平成26年度中に検討・結論を得て、平成27年度中に制度上の措置を目指す――としている(担当大臣は文部科学大臣、厚労大臣)。

高齢者中心から現役世代を含むバランスのとれた資源配分へ
~政府の経済財政諮問会議で民間議員が提案

政府が2月12日に開いた経済財政諮問会議で、民間議員が「経済の好循環の強化に向けて~格差について~」等の資料を提出した。その中では、「効果的な再分配機能の拡充に向けて」を挙げ、▼我が国の社会保障給付は先進諸国に比べて、現役世代への支出が相対的に少ないという特徴がある。母子世帯、若年失業者・無業者等への就業支援、子育て世帯に対する税制・給付面からの支援措置等により、自助自立を支援し、格差の固定を是正すべき、▼一般に、社会保障支出が大きいほど、政府の規模は大きくなる傾向がある。ただし、日本では、経済再生と財政健全化を両立していく必要があり、政府の規模拡大を通じて再分配機能を強化するには限界がある。高齢者中心から現役世代を含めたバランスのとれた資源配分へとシフトすべき――としている。

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