ホーム > 新着情報 > ウェルフェア・レポート 2015年3月25日号
平成27年度予算案を賛成多数で可決、参院へ送付
~衆院本会議
衆議院本会議は3月13日、一般会計の総額が過去最高の96兆3,420億円に上る平成27年度政府予算案を、自民・公明両党などの賛成多数で可決し、参議院に送付した。
■「診療報酬改定などを通じ歳出を重点化・効率化」―― 自民・平口氏
採決前の討論で、平口洋議員(自民)が賛成理由として「第一は子育て支援など我が国の諸課題への対応を強力に推進する予算」と指摘。介護報酬改定に関しては、「事業者の安定的経費の確保に配慮しつつ、介護保険料の上昇抑制や利用者負担の軽減などの国民負担の軽減を図っている。また、1万2,000円の介護職員の処遇改善を行い、事業者・国民・介護職員それぞれに考慮した改定を行っている」と評価した。続いて、「第二は2015年度の国・地方の基礎的財政収支(PB)の赤字の対GDP比率半減目標を達成する予算」と指摘。「安倍内閣はこれまでの予算編成で、消費税率8%への引き上げ等により税収を増加させる一方、診療報酬改定等を通じ社会保障の自然増を徹底的に見直すなど歳出の重点化・効率化を進めている」と強調するとともに、「10%への引き上げは18カ月延期となったが、27年度予算では歳出の徹底的な重点化・効率化を行い、2015年度の財政健全化目標の達成が見込めることとなった。2020年度のPB黒字化目標に向け、27年度予算は大きな第一歩を踏み出すもの」と述べた。
■「社会保障の大改悪の中止を強く求める」―― 共産・畑野氏
畑野君枝議員(共産)は反対理由に関し「社会保障について国民負担増と給付額の削減という全面改悪を推し進めるもの」と批判。「消費税増税は社会保障の充実のためと言いながら、昨年の骨太方針で社会保障予算の自然増を削減する方針を打ち出した。この下、来年度予算案は、高齢者医療の窓口負担増、介護報酬の大幅削減などを行おうとしている。社会保障の大改悪の中止を強く求める」と訴えた。
医療介護提供体制の整備や在宅医療・介護の連携等を提示
~衆参両院厚労委で塩崎厚労相が所信
塩崎恭久厚生労働相は3月13日の衆議院厚生労働委員会、24日の参議院厚生労働委員会で、所信を表明した。医療・介護に関しては、医療介護提供体制の整備や在宅医療・介護の連携などを示したほか、地域包括ケアシステムを構築するための新たな非営利法人制度の創設とともに、医療法人の経営の透明性を確保する法案の提出も挙げるなど、当面の主な課題と対応について説明した。
塩崎厚労相の所信表明の内容(抜粋)
急速に少子高齢化が進展し、雇用環境が変化する中、安定財源を確保しつつ、誰もが安心できる持続可能な社会保障制度を確立しなければならない。消費税率の引き上げによる増収分は全額を社会保障の充実・安定化に充てるとともに、引き続き社会保障制度改革を着実に進める。
医療・介護については、医療介護総合確保推進法に基づき、地域医療介護総合確保基金を活用した医療介護提供体制の整備、医療機能の分化・連携、在宅医療・介護の連携、介護予防給付の一部の地域支援事業への移行、費用負担の公平化を図る。
医療保険制度については、今後とも国民皆保険を堅持するため、持続可能な制度を構築することが重要である。国民健康保険の財政支援の拡充や財政運営責任の都道府県への移行などによる医療保険制度の財政基盤の安定化、被用者保険者にかかる後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入、医療費適正化の推進、患者申出療養の創設を内容とする法案を今国会に提出した。
平成27年度から各都道府県が地域医療構想を策定するが、取り組みが進むようガイドラインを示すなど支援を行っていく。医療機関の機能分担や業務の連携を推進し、地域包括ケアシステムを構築するための新たな非営利法人制度を創設するとともに、医療法人の経営の透明性を確保するための法案を今国会に提出する。
認知症の方の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を構築するため、本年1月に新たに策定した認知症施策推進総合戦略に基づき、政府一丸となって取り組みを進める。
がん対策については、がんによる死亡を減少させ、また、がん患者の方が安心して暮らせるよう、がん検診の強化、稀少がん対策や緩和ケアの推進に取り組むとともに、来年1月のがん登録推進法の円滑な施行に向けた取り組みを進める。
我が国は国民皆保険の下、世界最高レベルの健康寿命と保健医療水準を達成している。この経験を生かし、人材育成などの協力を通じて諸外国との関係を構築し、我が国の医療制度や医療技術、医薬品・医療機器について積極的に国際展開を進める。
社会福祉法人について、高い公益性や非営利性に見合ったガバナンスの強化、運営の透明化の確保、内部留保の明確化を進めるとともに、介護を含む福祉人材の確保を総合的に推進するための法案を今国会に提出する。また、報酬改定により、介護や障害福祉サービスを担う職員の処遇改善を進める。
外国人技能実習制度について、実習の適正な実施および実習生の保護を図るため、管理監督体制の抜本的な強化に関係省庁と共同で取り組む。
介護職の賃上げ、政府としての目標設定は明言を避ける
~参院予算委で塩崎厚労相
塩崎恭久厚生労働相は3月18日の参議院予算委員会で、介護職員の賃上げに関し、「政府としての目標を掲げて取り組む必要があるのではないか」との古賀友一郎委員(自民)の質問に対し、処遇改善の運用改善を図り実効性を上げていく必要性を示す一方、具体的な目標については明言を避けた。
古賀委員が厚労省社会保障審議会福祉部会の福祉人材確保専門委員会での検討結果(報告書「2025年に向けた介護人材の確保」)を挙げ、「介護人材の量と質の好循環を進めるということで、参入促進、労働環境・処遇の改善、資質の向上という3つのアプローチから対策を講じるとされているが、介護職員の賃金水準をどの程度にまで改善していこうと考えているのかが見えない」などと指摘。「政府として(賃上げの)目標を掲げ、それに向かって進んでいくようなやり方で取り組んでいただけないか」と塩崎厚労相に答弁を求めた。
塩崎厚労相は介護人材の給与水準に関し、「具体的なものは労使間の話し合いを通じて最終的には決定されるべきものである。大事なことは適切なサービスを提供していくうえで、賃金水準が主な要因となって人材確保が困難になってしまうことにならないような水準を目指していくべきではないかと考えている」などと答弁。政府としての賃上げ目標に関しては明言を避け、「引き続き、確実に(処遇改善の)運用改善を図りながら実効(性)が上がるように頑張っていかなければいけないと思っている」と述べるにとどまった。
未届けの有料ホーム「都道府県等と連携し、届出を促す」
~参院予算委で塩崎厚労相
塩崎恭久厚生労働相は3月18日の参議院予算委員会で、未届けの有料老人ホームに対し、都道府県等と連携し届出を促すよう対応を進める考えを示した。
荒木清寛委員(公明)が3月8日に名古屋市で起きた集合住宅の火災を挙げ、「入居者23人のうち2人が亡くなり4人が負傷した。入居者の1人は女性従業員、他の22人は賄い付きのサービスを受け、19人が生活保護を受けていた」などと指摘。未届けの有料老人ホームの実態を質問した。三浦公嗣老健局長は有料老人ホームの届出状況について、平成26年10月時点で届出があるのは全国で8,916件、一方、未届けは911件を確認しているとした。
荒木委員はまた、「届出をしない理由はおそらくガイドライン等が非常に厳しく、届出を躊躇する実態があると思う」と指摘。「届出の義務があるわけだから、広く届出をさせて指導・監督の俎上に乗せるべきだと思う。そういう改善をぜひ考えていただきたい」と塩崎厚労相に答弁を求めた。塩崎厚労相は「都道府県等に届け出ていないところがあり、それが問題になっているわけなので、私どもとしては届出を促すようにしっかりと都道府県等と連携し、そういうことがないようにしていきたいと思っている」と答えた。
社会福祉法改正「法人が役割を果たせるよう取り組む」
~衆院予算委の分科会で塩崎厚労相
塩崎恭久厚生労働相は3月10日の衆議院予算委員会の分科会で、今国会に提出予定の社会福祉法等改正案に関し、「社会福祉法人が福祉サービスの主たる担い手としての役割を果たしていけるよう取り組んでいきたい」との考えを示した。社会福祉法人改革に関する寺田学委員(民主)の質問に対する答弁。
塩崎厚労相は改正案の内容について、▼経営組織のガバナンスを強化する観点から、理事会あるいは評議員会の位置づけ、機能を整理し、権限を明確化、▼運営の透明性の確保の観点から、財務あるいは事業に関する書類の閲覧、ディスクロージャーの対象を拡大、▼財務規律の確立を図るために適正かつ公正な支出管理を徹底、▼余裕財産、いわゆる内部留保を明確化――するなどと説明。「社会福祉法人が国民の信頼を得て福祉サービスの主たる担い手としての役割を各地域で果たしていくことになるよう取り組んでいきたい」と述べた。
鈴木俊彦社会・援護局長は外部監査等に関し、「一定規模以上の法人には会計監査人による外部監査を義務づける」としたうえで、小規模法人についても「能力に応じ責務を果たしていただく観点から、会計の体制整備状況を公認会計士や税理士に点検してもらう責務もあることを法制上位置づけたい。公表については、法人規模にかかわりなく財務諸表やその他を閲覧できるようにすることを義務としていくことを改革の中で位置づけたい」と述べた。
「『公的サービスの産業化』さらに議論を進めてほしい」
~経済財政諮問会議で安倍首相
安倍晋三首相が3月11日に首相官邸で開いた経済財政諮問会議で、民間議員が「安倍内閣の3年目の好循環シナリオ」と「公的分野の産業化に向けて~公共サービス成長戦略~」を提示した。
「公共サービス成長戦略」では、「社会保障サービス・地方行政サービス分野について、規制改革とともに、サービス提供者のインセンティブに関わる制度(診療報酬、介護報酬、保険料、補助金制度、地方交付税制度等)の改革も行うことを通じて、多様な主体が参入し、多様なサービスを提供できる環境整備を進めることで成長産業化すべき」などと強調している。具体的には、「民間の多様な主体との連携(インクルージョン)の促進」等を提示。「医療介護分野の生産性向上」等を挙げ、「医療機関等が民間の多様な主体と連携し、サービスの標準化やIT化、マイナンバー、ビッグデータの利活用等により生産性を向上させる取組を推進すべき。生産性向上によるコスト抑制を通じて、歳出の効率化につなげるべき(診療報酬や介護報酬に反映等)」としている。
安倍首相は「公共サービス分野に民間のノウハウや資金を活用する『公的サービスの産業化』が経済再生と財政健全化の両立などに重要との提言を頂いた。さらに議論を進めてほしい」などと述べた。
27年度介護報酬改定を踏まえた必要検討分野を提示
~改定検証・研究委員会で厚労省
厚生労働省は3月20日に開いた社会保障審議会介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会で、「平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成26年度調査)の結果(概要)」と、「平成27年度介護報酬改定を踏まえた今後の課題」を示した。26年度調査では、「介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業」など7項目の調査結果を報告。27年度改定を踏まえた今後の課題では、検討必要分野として、▼横断的事項=「ケアマネジメントの質的改善」や「中重度高齢者・認知症高齢者への対応」等、▼居宅系=「機能訓練・リハビリテーション等の機能分類・評価体系のあり方」等、▼施設系=「介護保険施設等における医療提供のあり方」――のほか、その他の事項として「経営実態」や「介護職員の処遇改善」を示している。
お泊りデイの指針案を発表、パブコメ募集 ~厚労省
厚生労働省は3月20日、お泊りデイサービスを提供する事業所の指針案(指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等のサービスを提供する場合の人員、設備及び運営に関する指針案)を発表した。夜勤職員として介護職員または看護職員を常時1人以上確保することや利用定員を9人以下とすることなどを盛り込んでいる。厚労省では4月18日まで、同案に対するパブリックコメントを募集している。詳細は電子政府の総合窓口e-Gov(http://www.e-gov.go.jp)を参照。
生活期リハビリの具体的提案など示した意見書案を提示
~高齢者のリハビリの在り方検討会で厚労省
厚生労働省は3月18日に開いた「高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たな在り方検討会」で、報告書案を提示した。高齢者のリハビリを取り巻く現状や課題を整理した上で、地域でのリハビリの新たな在り方を指摘。生活期のリハビリの具体的な提案として、①質の高いリハビリ実現のためのマネジメントの徹底、②リハビリ機能の特性を活かしたプログラムの充実――の必要性を強調し、①では「利用者主体の日常生活に着目した目標を設定し、多職種の連携・協働の下でその目標を共有し、利用者本人や家族の意欲を引き出しながら、適切なサービスを一体的・総合的に組み合わせて計画的にリハビリを進めてゆくためには、改めてリハビリのマネジメントを再構築し、徹底する必要がある」などと説明している。また、「更に議論すべき課題等」として、▼通所・訪問リハビリの機能の再検討、▼医療と介護の連携、▼多職種連携・協働、▼専門職の質の向上、▼認知症のリハビリ――などを挙げている。